コラム

白内障手術による合併症とは

視力低下、ぼやけやかすみなど、さまざまな症状をひきおこす白内障。80歳を過ぎるとほとんどの方が発症し手術をすすめられます。
気軽に手術できるイメージを持っている方もいる白内障。前編はその手術法をお知らせいたしました。今回の後編では手術中や術後に起こる合併症のリスクやトラブルについて解説していきます。

◆手術中に起こる合併症

白内障手術で起こりえる合併症について解説していきます。

後嚢破裂
後嚢とは水晶体の後ろにある薄い膜のことで、通常は水晶体を保護しています。白内障手術中に後嚢破損が起こると、水晶体やその周囲の物質が眼内に流出し、手術の進行や結果に影響を及ぼす可能性があります。

 

チン小帯断裂

チン小帯は、眼球内で水晶体を保持し、正しい位置に維持するための組織です。手術中にチン小帯が断裂すると、水晶体や眼内の物質が不安定になって眼内に落下し、手術でそれらを取り除く必要があります。場合によっては、眼内レンズの縫合も必要となります。

 

駆逐性出血
白内障手術中に発生する駆逐性出血は、手術中の眼球内で血液が急速に溜まる現象で、失明の原因となります。 予測できないため予防法はありませんが、発生頻度は非常に低いです。

 

手術の中止
手術中に執刀医が角膜の異常を発見した場合や患者さんが安静にできない、ほかに眼の問題が見つかった場合など、眼内レンズを挿入できないと判断したときは、手術を中止することがあります。

 

◆手術後の合併症白内障の手術後合併症のメカニズムは次第に明らかになり、発生を抑制する方法が研究されています。 しかし、現在も手術後の合併症は多数存在し、すぐに起きる合併症と、時間が経ってから起きる合併症があります。

縫合不全・房水流出
傷口の縫合が完全ではなく、眼球内から房水と呼ばれる液体が漏れ出す状態です。経過観察、または再手術することがあります。

 

術後眼内炎
白内障手術後に細菌などが入り化膿性眼内炎を起こすことがあります。 放置すると眼内が膿んで失明します。1000例に1例程度みられ、抗生物質やステロイドで治療します。

 

眼内レンズのズレ、硝子体中落下
手術後に眼内レンズの位置がずれること(眼内レンズ偏位)や、レンズの一部が眼の内部に落下すること(硝子体中落下)があります。 後嚢破損、チン小帯断裂等の合併症があると起こりやすく、再手術が必要になります。

 

術後高眼圧
手術後に高眼圧が起こることがあります。これは、術後に起こる眼内の流体の阻害、炎症や組織の反応によって眼圧が上昇することが原因です。 ほとんどの場合、一過性ですが、中には眼圧上昇が続き、続発性緑内障になることがあります。

 

後発白内障
時間が経ってから発症するもので、手術で取り残された濁りが時間とともに悪化し、視界をぼやけさせる状態です。 この症状はレーザーで簡単に治療でき、視力も回復可能です。年齢や全身疾患の影響、執刀医が未熟だと発症しやすいともいわれています。

 

水疱性角膜症
水疱性角膜症は、白内障手術後に角膜が白く濁り、視界が悪くなる病気です。過去の眼の病気や手術歴、年齢などが原因になることが多いです。 この症状は自然治癒が難しく、最終的には角膜移植が必要となります。

※黒目が濁るため視界がかすみ、視力が低下します。角膜が侵されるため、強い痛みがあります。

 

網膜剥離
網膜剥離のリスクは低いですが、強度近視や眼底の網膜に弱い部分があると発症頻度が高いとされています。

 

− 最後に −
いかがでしたか。白内障の手術はこのように色々なリスクがあることを理解する必要があります。 手術は医師との信頼関係が重要です。わからないことや不安なことをそのままにせず、しっかり質問や確認をしてから手術に臨みましょう。何よりも大切なのは、天寿を全うするまで健康な目を維持することです。

最近の研究では、目の疾患は体の病気以上に活性酸素の影響をうけることがわかっています。日頃から紫外線対策はもちろんのこと、さまざまな抗酸化成分を摂取して予防に努めましょう。

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