コラム

日本人の腸に迫る危機

世界有数の長寿国、日本。これには、日本人が持つ特有の「長寿型腸内フローラ」が大きく関係していると言われています。

しかし、現在「過敏性腸症候群」や「炎症性腸疾患」が急増中です。日本にも欧米型の疾患が増え続けており、日本人の腸には今、危機が迫っています。

今回は、腸と日本人に忍び寄る現代病との関係について考えていきたいと思います。

日本人には少なかった「難病」が急増

難病に指定されている「潰瘍性大腸炎」や「クローン病」といった炎症性腸疾患が現在、急激に増え続けています。どちらの病気も欧米人に多く見られてきましたが、かつての日本では珍しい病気でした。

1976年の日本におけるクローン病の患者数は128人のみでしたが、2014年以降、クローン病と認定されている患者数は4万人以上に増加しています。潰瘍性大腸炎も1980年ごろから患者数が急増し始め、2009年以降では12万人を上回り続けています。

また、「過敏性腸症候群」で悩んでいる人も1200万人に上っています。この病気は、腸にポリープや潰瘍などの異常がないにも関わらず、ストレスで自律神経が乱れ、急激な腹痛とともに強い便意を感じるといった、便秘や下痢、腹痛、不快感を繰り返す病気です。

これらの病気は、いまだ原因不明と言われていますが、専門家の多くは、1980年ごろから進んでいる「食の欧米化」による「高脂肪食」との関連性を指摘しています。

腸内フローラを乱す高脂肪食

脂がのった肉料理や、油っこい揚げ物、ファストフードといった脂肪が多く含まれる食べ物が、脂肪肝や肥満症、脂質異常症(高脂血症)、メタボリックシンドロームといった生活習慣病の原因となることは、広く知られています。

しかし、高脂肪食は単なるカロリーの摂りすぎだけでなく、腸内フローラの乱れも引き起こしているのです。

腸内細菌には動物性の食べ物をエサにするものや、植物性の食べ物を好む細菌など、多くの種類が存在します。その中でも、動物性たんぱく質や動物性脂肪を好む細菌のほとんどが「悪玉菌」です。

つまり、動物性の食品や脂肪たっぷりの食事ばかり食べていると、悪玉菌が増え腸内環境の悪化を招くことに。悪玉菌から産生された毒素は、腸に炎症を起こしたり、血流で運ばれ全身の組織にダメージをあたえます。

そのダメージは、過敏性腸症候群や潰瘍性大腸炎、大腸がんといった腸の病気などを始め、アトピー性皮膚炎やぜんそく、じんましんなどのアレルギー症状、うつ病や自閉症といった精神疾患まで、全身にさまざまな病気が現れる要因となります。

塩分も腸内フローラに影響

最近の研究では、塩分も腸内環境に影響を与えていることが明らかになってきました。

塩分を6g多く摂取すると血圧の上昇を防ぐ腸内細菌が減少し、全身の慢性炎症を引き起こしやすくなることが明らかになっています。

一方、塩分を抑えると、血管の柔軟性を高め血圧を下げる働きのある酪酸やプロピオン酸などの短鎖脂肪酸が増えるという報告も。腸のためにも健康のためにも、1日の塩分摂取量は6~7gが理想的です。

ちなみにラーメンやうどんのスープには約5gの塩分が含まれているとのこと。

美味しいラーメン屋さんでは、スープまで飲み干して完食するのが楽しみの私ですが、健康のためにも、今後はラーメンスープを飲み干すのはガマンするように心がけます。

運動不足や悪い姿勢も腸の大敵

1日中デスクワークを行う人や、あまり運動しない人、家でゴロゴロして過ごす人も要注意です。

長時間座ったままや、じっとして過ごしていると自律神経のバランスが崩れやすくなります。自律神経は交感神経と副交感神経の2つから構成されており、腸内環境や腸のぜんどう運動を支配しているのは副交感神経です。

そのため、自律神経のバランスが崩れてしまうと便秘や下痢、腸が原因のさまざまな病気や症状が起こる恐れがあります。

また、座りっぱなしやダラダラした姿勢は悪い姿勢の原因にも…。

猫背や腰が曲がった姿勢などの前傾姿勢が癖になると、上体の重みで腸が圧迫され、腸のぜんどう運動が妨げられます。血流も悪くなり、腸粘膜に栄養や酸素が十分行き渡らなくなることでも、腸内環境は悪化します。

慢性的な便秘は、運動不足や姿勢の悪さが原因の可能性も。ぜひ正しい姿勢と適度な運動を意識してみてください。

腸げんき体操「全身のばし」で腸内環境改善!

この体操は腸周りにある筋肉をほぐしつつ、背筋をまっすぐにして悪い姿勢を正します。

1~5までで3回繰り返すのを1セットで、朝昼晩に1セットずつ行ってみてくださいね。

 

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