コラム

空腹が病気を遠ざける!?食べすぎが招く健康リスクとは

「1日3食、規則正しく食事をしましょう」。

子供のころから言われ続け、常識だと思っていました。

しかし、この1日3食という習慣が広まったのは比較的最近だそう。時期やきっかけについては諸説ありますが、江戸時代までは1日2食が一般的だったようです。

近年、「食べすぎ」による健康被害や、「空腹」がもたらす健康への効果が注目されはじめてきました。「腹八分しか食べないし、自分は食べすぎじゃないよ」という方も、1日3食しっかり食べている人は、内臓が疲れ気味かも…。

内臓の疲れは、がんをはじめ生活習慣病や認知症など、さまざまな病気を呼び寄せます。

今回は、食べすぎと病気の関係、空腹が病気を遠ざけるメカニズムについて、詳しくお伝えしていきましょう。

 

誰でも毎日、がん細胞は作られている

日本人の死因で最も多い「がん」。日本人の2人に1人はがんを患い、3人に1人はがんで亡くなっていると言われています。

がん細胞が生まれるきっかけは、なんらかの原因で傷ついたDNAによって突然変異をおこした細胞です。胃腸など内臓の表面が傷つき、修復がうまくいかずに、がん細胞が生まれる場合もあります。

DNAは日々、活性酸素や外部からの刺激にさらされ、体内では毎日3000~5000個ものがん細胞が生まれているとも言われています。

しかし、我々は体内に傷ついたDNAを修復する酵素を持っています。また、酵素ではDNAを修復できないほどのダメージを受けた細胞を、すぐに除去する免疫の仕組みも私たちの体には備わっています。

そのため、多くの人はがんにならずに過ごしているのですが、DNAの修復機能や免疫機能が衰えたり、ダメージを受けた細胞をうまく除去できないとがん細胞が残され、がんになってしまいます。

がんの発生リスクが高まる肥満と糖尿病

食べすぎによって内臓脂肪が増えたり、糖尿病になったりすると、インスリンへの反応が低下し、血糖値が下がりにくくなります。

すると、血糖値を下げるために、より多くのインスリンを分泌。体内のインスリン濃度が上昇し、この状態が続くと体全体の細胞が増えやすくなります。それと同時に、ダメージを受けた細胞を除去しにくくなるため、がん細胞が残ってしまったり、増殖しやすい状態となります。

さらに、内臓脂肪が増えすぎてしまうと「IL-6」というがん細胞の増殖を促進する悪玉ホルモンが分泌されます。

日本癌学会の発表によると、肥満はタバコとならんで、がんの原因の30%をしめ、大腸がん、肝臓がん、すい臓がん、子宮がん、腎臓がんに大きく影響しています。

がん予防において、肥満を防ぐことはタバコを吸わないのと同じぐらい重要です。食べすぎの食生活を見直して肥満や糖尿病の防止を心がけましょう。

糖尿病との関連性が指摘されているアルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症は「アミロイドβ」などのタンパク質が脳に蓄積し、脳が萎縮する病気で、だんだん物覚えが悪くなったり、人・場所・時間などの認識ができなくなるといった症状が現れます。国内の認知症患者のうち、6〜7割がアルツハイマー型認知症です。

はっきりとした原因はまだ解明されていませんが、アメリカの研究では糖尿病や高脂血症といった生活習慣病とアルツハイマー型認知症との関連性が指摘されています。

内臓脂肪から分泌される悪玉ホルモンによって脳にアミロイドβが蓄積されているという動物実験の結果もあるそうです。また、九州大学が1985年から継続している研究では、血糖値が正常な人に比べて、糖尿病患者がアルツハイマー型認知症を発症するリスクは2・1倍も高くなっていることも分かっています。

脳の健康維持にも、食べすぎの食生活は見直す必要があると言えそうです。

食べすぎによる高血圧が急増中

日本人の高血圧は長い間「塩分の摂りすぎ」が原因として挙げられた来ました。しかし、近年、内臓脂肪型の肥満が原因の高血圧が増加中

糖質や脂質を摂りすぎにより、血液中の中性脂肪や悪玉コレステロールが過剰となり血管の壁に付着し血管が細くなるのが原因のひとつです。

同時に、内臓脂肪の増加によって過剰に分泌されたインスリンの影響もあります。インスリンには交感神経を優位にする働きや、腎臓の塩分排泄を妨げる働きもあるため、血圧の上昇を招きます。

塩分の摂りすぎだけでなく、食べすぎもまた高血圧を招く原因となるのです。

空腹がさまざまな病気のリスクを減少!

週一回、長時間なにも食べずに内臓を休めることで、ここまで紹介してきたがんや肥満、糖尿病、アルツハイマー型認知症、高血圧症を遠ざけられます。

食べすぎで胃腸が疲れているとがんを引き起こす有害な物質がたまりやすくなり、腸内環境が悪化。腸には多くの免疫細胞が集まっているため、免疫力も低下します。

空腹の時間を設けることで、胃腸が休まり働きを回復させられます。有害物質は発生しにくくなり、免疫力も活発に働けるようになるため、がん細胞を取り除く力も高まります。

10時間ほど何も食べない時間が続くと内臓脂肪が分解され始めます。脂肪肝の改善にもつながり、肝臓がんの予防にも効果的です。

さらに、16時間空腹でいると、「オートファジー」のスイッチが入ります

オートファジーとは本来私たちの体に備わっている古くなったり傷ついたりした細胞のタンパク質を使って細胞を新しく生まれ変わらせる体の仕組みです。オートファジーが働くと、老廃物が一掃され若々しさを取り戻せるうえ、病原菌を分解・浄化する作用もあるため病気を遠ざけ、健康を維持できます。

オートファジーについては健康おぼえがき内のコラム若返りの仕組みとは?オートファジーを働かそう!で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。

※16時間の空腹は、がんの予防に役立ちますが、すでにがんが体内に発生している場合は、オートファジーが働くとがん細胞が生き残りやすくなってしまうため注意が必要です。すでにがんを発症している方は医師の指示に従ってください。

 

評価をお願いします

最近の記事