コラム

食欲の秋を楽しくする表現

い~しやぁ~きいもぉ~おいもぉ~!ホクホクの石焼き芋だよ〜!
食べ物の美味しさを伝える時に、よく使う表現方法とは?今回は美味しさが伝わる「言葉の力」についてお話します。

食べ物から生まれる音の「オノマトペ」

噛んだら音がするお煎餅やお漬物、ナッツ類など、お好きな方は多いですね。
硬いものを噛んだ時の音や麺類をすするときの音、ビールや炭酸飲料の音は、私たちに心地よい快感を与えてくれます。

バリバリ、ツルツル、シュワシュワといった擬音語や擬声語、自然界の物音、動物の鳴き声をまねて作られた言葉を総称して「オノマトペ」といいます。
オノマトペは、日常生活やマンガでも頻繁に使われているコミュニケーション方法のひとつで、フランス語に由来する外来語です。
歴史は古く、古代ギリシャ語の「オノマトポイーア(音を真似した単語)」が語源と言われています。ソクラテスやアリストテレスも使ってたのかもしれませんね。
ちなみに日本人が初めて使ったオノマトペは食べ物に関するものではありませんが1300年以上前、古事記に記載された「塩こをろこをろ」だそう。

これはイザナギノミコトとイザナミノミコトの2人が矛で海をかき混ぜ、「カラカラ」と固まって日本最初の島、淡路島ができた日本創世の音と言われています。
では、私たちが最初に使ったオノマトペはなんでしょう?

 

もしかしたら……赤ちゃんの時に発した「うま うま」かもしれませんね。子供っぽい表現ですが、その感覚は確実に伝わります。

美食大国フランスに勝つ日本

食感に関するオノマトペは世界中の言語に存在します。
食品総合研究所の調べでは、美食大国の言葉、フランス語には227語あり、中国語で144語、世界共通言語に近い英語で77語、ビールやソーセージで有名なドイツ語で105語あります。
ところが日本語は群を抜いて445語の表現があり、今も増え続けています。

「シトシト」、「ビュービュー」といった食感以外のオノマトペを含めると約4500語もあり、なんと日本語の100語に1つがオノマトペ!!この数は世界一といわれています。

豊富な食文化が新たな言葉を生む

なぜ日本語はオノマトペが発達したのでしょう。さまざまな理由が考えられますが、その一つとして日本人が持つ食文化へのこだわりが挙げられます。
私たち日本人には生食文化があります。微妙な歯触りや茹で加減、さらに品種の違いに対する感性を持っています。これに対し、素材をひたすら加熱して、潰したり濾したりする食文化では、食感は均一に近いものになります。

縦に細長い日本列島は、気候の変化もあり豊かな食材に恵まれ、姿や色彩を活かした食べ方をしてきました。
それぞれの食感を表現するのに多くの言葉が必要なので、日本語はオノマトペが豊富なのかもしれません。
実際、お芋やカボチャのオノマトペである「ホクホク」、練乳や蜂蜜のオノマトペである「トロトロ」という言葉に相当する外国語はとても少ないようです。

脳に働きかける「オノマトペ」

料理をする時には食材を「トントントン」と切ったり、「コトコト」と煮たり、「ジュージュー」焼いたり、「ジャー」と炒めたりする調理音。料理ができるまで子供たちと家族で「ワイワイ」「ガヤガヤ」過ごすなど、楽しいオノマトペの表現が沢山ありますね。

日本人は昔から虫の音を愛でたように、食の音も楽しんできました。
今、脳科学分野の研究で「言葉にすることで味の記憶が強くなるか」というテーマや「認知症の予防・改善」などでいくつもの実験がされています。
食べた時の味や香り、食感を言葉にすると、脳に良い刺激を与えるので、人に伝えるだけで美味しさを思い出しますし一石二鳥ですね。

多彩な食感表現を使ってみよう

おいしいものを食べたら、どんな風に美味しかったか言葉にするのは楽しいことです。言葉にすることで食べ物への興味や愛着がわき、食卓の楽しい記憶も増えると思います。
本日の食事から、いろいろなオノマトペを探して口に出してみてください。きっと今まで以上に食事が美味しく・楽しく感じることでしょう。

 

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