コラム

炎症が長期化するとうつになる?

最近の研究では、身体に炎症が起こると、それに伴い脳も炎症を起こし、一時的にうつ状態になるということがわかっています。そのため身体に炎症が起こると、心が沈んだりやる気がなくなったりすることがあるのです。

これは私たちの身体にある免疫システムの働きによるもので、炎症からの回復を早めるために起こる現象です。一時的なものなので、単に身体に炎症が起こっただけでは、うつ状態になることはありません。

しかし炎症が鎮まらず、長期化するとうつ病を引き起こしてしまうこともあるのです。

炎症が鎮まるメカニズム

身体に炎症が起こると、血中の免疫細胞マクロファージがサイトカイン(炎症性タンパク質)を産生します。このサイトカインの濃度が高まると、「迷走神経」と呼ばれる神経が「サイトカインの濃度が高すぎるよ!」と「脾臓」という臓器に信号を送ります。

迷走神経から信号を受け取った脾臓は、マクロファージの作用を鎮め、サイトカインの産生を減らします。そして、サイトカインが産生されなくなり、徐々に炎症が鎮まっていくというのが、通常の姿です。

免疫細胞の誤操作と長期の炎症

ところがこうしたメカニズムがうまく働かず、免疫システムの誤操作により長期的な炎症が発生することがあります。

たとえば自己免疫疾患のリウマチは、免疫細胞マクロファージが、自分自身の正常な細胞や組織を、異物や細菌などと同様に身体に害のあるものだとみなし、攻撃をし続ける病気です。そうなると、皮膚や筋肉、骨、コラーゲン、臓器など、ありとあらゆるものを痛めつけてしまいます。

 

脳も長期の炎症が続くとセロトニンが供給されない

免疫細胞であるマクロファージが誤操作を起こすように、脳の免疫細胞ミクログリアも暴走することがあります。従って、脳が炎症を起こした際にもしもミクログリアが暴走すると、ミクログリアが神経細胞を死滅させ、再生も妨げることになります。

神経細胞が死滅するとどうなるかというと、脳の神経伝達物質が供給されづらくなります。

ここでうつ病と関係するのがセロトニン不足です。セロトニンは脳の神経伝達物質の1つで、心の安定や幸福感などを司る物質です。

ミクログリアの暴走により神経細胞が死滅すると、セロトニンの供給までいつまでも落ちたままになってしまいます。その結果、心が不安定になったり、幸福を感じづらくなったりし、それがうつ病へと繋がることがあるのです。

免疫細胞の暴走を防ぐには迷走神経を刺激しよう

こうした免疫細胞の暴走を防ぎ、うつ病を予防するには、脾臓に信号を送ってくれる迷走神経を刺激することが効果的です。

迷走神経を刺激する方法で手軽にできるものの1つに、ツボ押しがあります。耳の内側には迷走神経があるため、耳の内側のツボを刺激すると迷走神経が刺激されます。ツボの場所は覚えるのが難しいので、耳の内側をさするだけでも効果があります。また深呼吸をして1〜2秒息を止めると迷走神経を刺激することもわかっています。これはヘーリング=ブロイエル反射と言われるものです。ただし息を長く止めすぎると血圧が上がるので、特に高血圧の人は注意して行うようにしてください。

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