コラム

あなたの脳と遺伝子に与える悪影響とは【睡眠編】

睡眠時間が世界で一番短いのが、日本人です。男性にとっても女性にとっても、大きな問題となっています。

大人の問題は後述しますので、まずは日本の未来を担う子供たち。塾通いで寝るのが遅い、というのが特徴ですよね。

コロナ禍で部活動や遊ぶ時間が減り運動不足。メリハリのない生活のために睡眠が浅くなり、寝坊しがちになるなど、悪循環に拍車がかかっています。

ここにきてようやく来月13日からマスク着用の義務が解除されます。
これで、コロナに感染しなければ嬉しいのですが、コロナのワクチンを何回接種しても、感染は防げないということが次第に明らかになってきました。

では、今後、どうすれば自分と大切な家族を守れるのでしょうか。

そのカギを握るのが、睡眠です。

寝不足は免疫力の低下を招きますが、一週間平均で6時間以下の睡眠ですと、どんなワクチン接種をしても、抗体を作る能力が50%以下にまで落ちてしまうというのです。

残念ながら、政府や分科会、マスコミもたっぷり睡眠をとるよう案内していないですねぇ。

新型コロナだけでなく、今後私たちを襲うだろう未知のウイルスに負けないためにも、今日から睡眠を充実させましょう。

睡眠の仕組み

人間は他の生物と違い、自分の意思で睡眠時間を削っている、世界で唯一の種族です。しかも、先進国ではこの100年で、睡眠が2時間も短くなりました。

日が暮れると、目の奥にある視交叉上核(しこうさじょうかく)が「暗くなったぞ!」と認識。
メラトニンという眠くなるホルモンを、脳の奥にある松果体から血中に放出し始めます。

もう一つがアデノシンという物質。これは、目が覚めてから徐々に脳に溜まっていき、いっぱいになると眠くなります。
ひとは、そのようにできています。

夜の睡眠を奪う午後のコーヒーやダークチョコ

カフェインは、このアデノシンの増加を脳に認識させない働きがあります。
カフェインの分解は、肝臓から分泌される酵素によるものですが、年齢とともに分解速度が遅くなり、半日以上カフェインが体内残ります。

ただでさえカフェインに弱い遺伝子である日本人にとって、午後のコーヒーは、夜の睡眠の邪魔な存在です。

玉露やダークチョコレート、アイスクリーム、さらにはコーラなどの清涼飲料水、エナジードリンクにもガツンと含まれているので、とくに妊婦(胎児)やお子さんは要注意です。

睡眠不足は、わたしたちが思っているよりはるかに深刻な問題を引き起こします。

なぜ深い眠りと
浅い眠りがあるのか

寝始めると深い眠りのノンレム睡眠が脳を支配。その後に「眼球が素早く動く」という意味のレム睡眠が支配します。

両者併せておよそ90分間サイクルですが、午後11時くらいからの寝始めではノンレム睡眠が大きく支配、段々と割合が変化し、朝になるとレム睡眠が多くなります。

ノンレム睡眠の役割は、学んだ情報を吟味して、その記憶を脳の奥のファイルに整理するものです。

レム睡眠とは、身体が弛緩しますが目は小刻みに動き夢を見る睡眠で、脳の奥に格納されたファイルを引き出し、記憶を統合、さらに発想・思考を豊かにするものです。

ただ単に8時間寝ればよいというものではなく、人の身体に備わった周期である「概日(がいじつ)リズム」というものがあり、大人の場合は夜11時前ごろから朝の7時過ぎまでが睡眠に適している時間帯です。

夜11時のところを午前1時に寝始めると、記憶を整理するはずの最初の大きなノンレム睡眠が失われます。また、朝5時に起きてしまうと、発想や思考を豊かにするはずの最後の大きなレム睡眠が失われます。

夜一杯のアルコールが記憶を阻害

アルコールは眠りを誘いますが、それは前頭前皮質という部位を麻痺させるからです。自然な眠りとは異なります。

しかも眠りを断片的にして、疲れは抜けません。朝までぐっすり寝た、という人は、途中で覚醒してしまったことを憶えていないだけです。

アルコールを摂取すると体内でアルデヒドという化学物質が作られ、ノンレム睡眠を阻害します。経験・記憶したはずのことを、その日にアルコールを摂取すると、一週間後には50%も忘れてしまいます。

ならば、大事なことを学んだ3日後に飲むことにしよう、と思うのですが、残念ながら、覚えたことの40%が記憶から消えてしまいます。

つまり、記憶の定着には、少なくとも3日では終わらないという事です。

もし、記憶を根付かせたいのなら、朝に飲んで、夜寝る前までにアルコールが抜けている状態にすればいいのですが、果たして、それは難しいですね(笑)。

睡眠が脳をお掃除

脳内には汚物を排出する下水システムがあることが、近年分かりました。体内で下水のような働きをする「リンパ」と同じようなものです。

深いノンレム睡眠のリズムが始まると、昼間の10~20倍の老廃物を脳から排出します。脳内には神経細胞(ニューロン)の他に、「グリア細胞」というものがあり、深いノンレム睡眠につくことで大きさが60%まで縮むのです。

すると、脳の神経細胞との隙間が広くなり、脳内の体液である脳骨髄液が流れやすくなり老廃物を一掃します。

朝起きた時に頭がスッキリしているのは、これら夜間の清掃員たちのお陰です。

アルツハイマーとの関係

アルツハイマー病の原因とされるのが、アミロイドβというタンパク質やリン酸化したタウタンパク質の蓄積、さらには脳の神経細胞が日中に生み出したストレス分子などです。これらは本来、毎夜しっかり深い眠りにつけば、洗い流されるはずの老廃物です。

アミロイドβは深い睡眠を生む場所に溜まりやすく、そこを攻撃します。つまり、深い睡眠が減るのとアミロイドβが根付き、負のスパイラルへ陥れます。

若いころから慢性的に睡眠不足の人は、アルツハイマー病になるリスクが飛躍的に高くなります。
不眠症や睡眠時無呼吸症候群などの疫学調査でも、その関係が指摘されています。
早めに寝て、深いノンレム睡眠を心掛けましょう。

トランプ前大統領の行く末

サッチャー元英国首相とレーガン元米国大統領は、いつも4~5時間しか寝ていないことを自慢というか公言していたそうですが、晩年は2人ともアルツハイマー病を発症しました。

トランプ前米国大統領に至っては、睡眠は2~3時間で充分だと豪語していたそうです。彼の言動を見ると、それ以前に何かが壊れていると思わざるを得ませんが、一層拍車がかかると思われます。

遺伝子までも蝕む
「睡眠不足」

様々な研究結果により、睡眠不足はアルツハイマー病、がん、糖尿病、うつ病、肥満、高血圧、心血管疾患などを引き起こすことが分かっています。

健康な男女を対象に、6時間睡眠を一週間続けた後の遺伝子を調べた実験があります。

その結果、711もの遺伝子に異常が見られました。その半分は、慢性的な炎症、細胞のストレス、心血管病を引き起こす要因になる遺伝子で、そこに異常な活動を示しました。

残る半分の遺伝子は、代謝活動の安定や免疫機能の強化に働くもので、その正常な活動を止めてしまったのです。

また、善玉コレステロールを正常に保つ遺伝子の活動も妨げられていました。

テロメアの損傷と短縮

睡眠不足の害は、遺伝子の情報が異常になるだけでなく、生命の根幹であるDNAの構造にも攻撃を加えます。

テロメアとは染色体の先端を守るキャップのようなもので、この短縮スピートが遅いほど老化が進みません。

寝不足になるとテロメアを損傷させてDNAをむき出しにしてしまいます。
5時間睡眠の人は7時間睡眠の人に比べ、テロメアの短縮(老化)スピードが増して、実年齢より相当に老けてしまうのです。

睡眠を粗末に扱う人は、毎晩自分で自分の遺伝子を操作しているのと同じです。いやはや、ほんとうに怖いですね。

睡眠と生殖機能

男性
20代半ばのスリムな男性で、5時間睡眠を一週間続けてもらったところ、血中のテストステロンという男性ホルモンが、10歳から15歳も年をとったのと同じくらい大幅に減少していました。

睡眠時間が短い男性は、十分な睡眠をとっている男性に比べ、精子の量が29%少ないのです。しかも、精子自体の質も悪くなっているのです。

俺は大丈夫だと偉ぶる男性も、次の言葉でうなだれます。それは、「睾丸が極めて小さくなっている」、です。

彼らは性欲が少なく、仕事にも集中できず、活力は低下しています。テストステロンは骨密度を保ち、筋肉の量を増やす働きがあります。やはり、睡眠がいかに大切かが分かります。

女性
日常的に睡眠時間が6時間以下の女性は、受精に影響がでます。しかも排卵に欠かせない卵胞刺激ホルモンの量が20%減少しています。

また、夜遅くまで働く、あるいは夜勤の女性は、昼間に働く女性に比べ、生理不順の確率が33%高くなります。

それに加え、働く時間が不規則な女性は、妊娠で苦労される確率が80%も高く、たとえ妊娠したとしても、睡眠が8時間未満の女性は、それ以上の睡眠をとっている女性に比べ、3ヶ月以内に流産する確率がかなり高くなります。

そう、遅くとも11時には床について、8時間~9時間は寝たいものです。

良く寝られますように

◎いつも同じ時間に寝て、同じ時間に起きることです。目覚ましは、何度も鳴るものでなく1回だけ(鳴るたびに、心臓への負担にもなる)。

◎昼寝は失われた睡眠を取り戻す良い方法ですが、午後3時以降の昼寝は、夜の入眠に影響が出るのでしない。

◎運動は、寝る2~3時間前に終わらす。

◎寝る前の3時間前には、ブルーライトを発するスマホなどを控え、室内の照明がLEDなどの場合、暖色系に変化するものにする。

◎寝る前にお風呂に浸かる。リラックス効果とともに、お風呂から出た後に熱が発散され、体の内部の温度が下がり、睡眠へといざなう。

◎寝室の温度は、18.3℃ほどにする。低いと思うかもしれないが、安眠へと導く。

◎日中に合計30分~1時間は太陽の光を浴びる。とくに朝の光がお勧め。

ぜひ、実践してくださいね。

 

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