コラム

あなたの「細胞」を助けよう!

抗体や酵素でもあるタンパク質は大切ですよ、という前号の続きです。

厚労省は成人に対し、女性は50㌘、男性は60㌘のタンパク質の摂取を推奨しています。

お肉はタンパク質の代名詞ですが、水分と脂肪が多くを占め、タンパク質は20%程度しか含まれていません。なので50~60㌘の摂取となると、お肉なら250㌘~300㌘必要です。

でも、ごはん白米(茶碗1杯150㌘とするとタンパク質は9㌘)や食パン(6枚切り1枚で6.2㌘)にも含まれるので、お肉はそれほど摂らなくても満たされます。
ところで、体重が60㌕の大人の場合、細胞の中では1日に約240㌘ものタンパク質が分解され、新しく合成されています。これは、以前お話しした細胞の中の浄化作用であるオートファジーの働きで、細胞の中のタンパク質を再利用するからです。

タンパク質を摂りすぎると!

食事から摂った必要以上のタンパク質は、胃や腸で分解され、アミノ酸になった後にはタンパク質にはならず、ほとんどがエネルギーに変換され消えていきます。
むしろ、日本人は過剰摂取している人が多いようで、タンパク質の摂りすぎは体に悪影響や炎症などを生じさせてしまいます。

エネルギーになるタンパク質は、このときに有害なアンモニアが発生し、肝臓が解毒して尿素にかえ、腎臓から尿として排出されます。
つまり、過剰摂取が常習になると、肝臓や腎臓に負担をかけ続けてしまうのです。
なにごとも、ほどほどがよろしいようです。

オートファジーは4時間後に

オートファジーを復習されたい方は、こちらをご参照ください。(22/12/02若返りの仕組みとは?)(22/12/16オートファジーを働かそう!
さて、食事をとらなければ、細胞内でオートファジーは活性化します。週に一度は食事の間隔を16時間空けるとよい、というのは有名です。
でも、どのぐらいで活性化してくるかと言うと、お昼ご飯から晩ご飯でも充分です。食後4時間もすれば活性化しはじめます。一食抜けばオートファジーはさらに活性化します。
かといって、一食抜くくらいなら問題はありませんが、1日一食を続けたり、極端な断食はお勧めしません。

食事抜きダイエットの弊害①

筋肉の細胞には、力を出すための細長~いタンパク質が並んでいますが、ダイエットなどで栄養が補給されなくなると、タンパク質が分解されて徐々に筋肉が細くなります。すると手や足から細く貧弱になっていきます。しかし、エネルギーを貯める役目である脂肪細胞はなかなか減りません。

控えるべきは、高脂肪食

脂っこいものを食べ過ぎると、ルビコン(※後述)が増え、オートファジーの働きが悪くなって脂肪肝になります。
もちろん、油は細胞膜を作るなど重要ですので完全カットでは駄目ですが、揚げ物や脂身、霜降肉は控え、オリーブオイルも体に良いはずといって、スプーンで飲む、等はやめましょう。

悪者のタンパク質ルビコンとは?

オートファジーに関わるタンパク質の遺伝子は30種類以上見つかっています。その中に珍しい働きをするタンパク質、ルビコンがあります。他のタンパク質はオートファジーが機能するのに必要なタンパク質でしたが、ルビコンは正反対。
いわばオートファジーのブレーキ役です。

なぜ先述の脂肪肝になるのかというと、アルコールの飲み過ぎや脂っこいものの食べ過ぎです。後者の高脂肪食によって、肝臓にルビコンが増えていきます。
オートファジーの能力が低下する原因を調べていたらルビコンが増えすぎているということが明らかになったのです。

でも、なぜルビコンが存在するの?

ならば、ルビコンをなくせばよい! と考えるのは短絡です。存在するということは、何か理由があるはずです。
じつは、ルビコンがないと困る場所がありました! それは脂肪細胞です。

健康の敵のような細胞に映るかもしれませんが、栄養を与えてくれるのが脂肪細胞であり、他の細胞に指令を送るホルモンも出しています。そう、ないと困る細胞です。
この脂肪細胞のルビコンを壊してしまうと、糖尿病とはじめとした生活習慣病の症状が出るのです。

食事抜きダイエットの弊害②

脂肪細胞でオートファジーが活性化しすぎると、ホルモンを作るのに必要なタンパク質までも、せっせと分解します。結果、ホルモンを作り出せなくなってしまうのです。

年齢とともに脂肪細胞ではルビコンが減少していきます。すると他の細胞とは反対に、脂肪細胞の中でオートファジーが活性化してしまい、ホルモンを作るタンパク質を壊します。脂肪細胞以外では邪魔者と思っても、脂肪細胞にとってルビコンは必要なものです。
つまり、1日一食を続けたり極端な断食は、脂肪細胞においてもよくないのです。

病気は、細胞が悪くなっている

風邪やがん、アルツハイマー病、糖尿病、脳梗塞などどんな病気でも、細胞の異変が生じています。
体の中は毎日のように火事や大雨に晒される事件が起きていますが、私たちの体にはものすごい修復力・防御力があり、被害を食い止め、大きくしないよう防衛隊が備わっています。

だからといって、肉ばかりを食べたり、脂肪を摂りすぎたり、逆に栄養を摂らなすぎれば、あなたの細胞は危機に見舞われます。
日々の食事と適度な運動が何よりも大切です。
ちなみにわたしは、週に1度だけ、16時間ダイエットをしています。
どうぞみなさま、無理なダイエットはせず、あなた自身である「細胞」を助けてくださいませ。

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