コラム

天才をつくる睡眠術

人類はもともと、木の上で生活していました。体が弛緩しては木から転げ落ちてしまいます。つまり、レム睡眠をとることができなかったのです。
もし地上で寝てしまえば、猛獣からすれば無防備に地面に横たわったご馳走です。

ところが、祖先は火を使えるようになり、寝ている間も火を絶やさず害獣や害虫から身を守れるように。おかげで木から降り地面でゆったりと横になり寝ることができるようになりました。

もちろん用心はせねばならず、害獣から身を守るため交代で火の管理をしました。
夜になかなか寝られない人は夜の当番、朝が早い人は朝の当番。その名残が私たちの朝型と夜型との違いのようです。

体が弛緩して動かなくなるレム睡眠は、常識ではありえないような夢も見ます。
ノンレム睡眠により脳の奥に格納されたファイルから記憶を引き出し、色々な状況で応用できるよう思考を豊かにするからです。
そのおかげで人類の知恵は格段に高まりました。

天才エジソンの睡眠術!

偉大は発明家といえば、トーマス・エジソン。1300余りの発明・技術革新を行った人物です。蓄音機や白熱電球、映写機などが有名ですよね。

彼はよく昼寝をしていたそうです。普段から30分ほどの短い仮眠を1日数回取っていたのですが、その取り方があまりにもユニーク、ご紹介します。

昼寝をする際にエジソンは、肘掛けのある椅子を仕事机の脇に用意。
机には紙とペン。右のひじ掛けの真下に、フライパンを裏返しで床に設置。そして右手で鉄の球を2~3個を握りしめます。

夢を見はじめると筋肉が弛緩するので、右手に握った鉄球が落ち、フライパンに当たり、大きな音がします。

その音で目覚めたエジソンは、夢で見た独創的なアイデアをすべて紙に書き写していたそうです。

この睡眠法こそ発明ですよね!
日頃から、あるいは寝る前に何かを思い解決したいと念じる必要があるのでしょうが、トライしてみる価値、ありそうかも(笑)。

夜更かしはエジソンのせい!

エジソンの電球の発明・普及により生活は便利になりましたが、寝る時間が遅くなりました。その後もテレビ、ネット、青色LED、スマホの発明が続き、就寝時間が後へ後へと追いやられます。発明には功罪の両面が潜んでいるのです。

運動は脳を刺激する

身体活動・運動は、体を調整しバランスをとる作業なので、脳に刺激・試練を与えて鍛えてくれます。
活動的な人は、多くの情報を収集するだけでなく、脳に課せられる要求も広範なものとなるので、より長く集中的な深い睡眠が必要になり、ぐっすりと寝られるようになるのです。

「座り過ぎ」が 睡眠を浅くする

自宅でも仕事でもほとんどを座って過ごす人は、眠りが浅く、記憶の定着も応用も弱くなります。どうしても運動量が少ない人は、読書、勉強、将棋などの奥深いゲームの研究などで頭を使えば、新たに得た情報を処理するために、脳が深い睡眠を求めます。
なお、ほとんどのテレビゲームやYouTube、Instagramなどは駄目ですねぇ。
なお、年配の人はすでに多くの経験や情報を脳に定着させています。そのため高齢になると、深い睡眠をさほど必要としなくなります。それに対し子供は毎日が発見の連続で、学びがたくさんあります。そのため多くの睡眠を必要とします。

朝の光を浴びないと、頭は働かない

目の網膜が敏感な朝のうちに、外で過ごすべきです。晴れの日であれば30分、曇りであれば1時間は散歩したいです。

都会ですと数分で登校できる子たちも多く、脳も体も目覚めることができませんし、成績にも差が生じます。

大人も仕事場まで10分程度では、太陽光を浴びるチャンスを失います。遠回りをして、仕事ができる脳と体にしましょう。

しかも、部屋にこもり太陽の光を浴びていないと、日中から体は睡眠ホルモンであるメラトニンをためらいながら生成しており、頭がしっかり働きません。

犬を飼っていれば朝晩の散歩は毎日。また、ご年配者があつまるゲートボールなどもいいですね。あるいは午前のうちにスーパーまで歩き、買い物をする。昼食後は腹ごなしを兼ねて軽い散歩をするなどなど。

日々聡明でいるためにもコツコツと太陽光と運動を得るよう意識してください。

入院したら窓側のベッドを選ぼう

太陽の光が差す窓のそばのベッドの入院患者は、窓から1m以上離れたベッドの患者と比べると、夜の睡眠時間が1時間も長く眠れて、病状の回復と退院も早まるというデータがでています。

日本の学校も工夫すべし

学校の1時間目を体育や屋外の授業にすると、成績が上がるといいます。
睡眠・覚醒リズムを正しく整え健康と脳を強化するためには、日光がいかに大切かを示しています。ぜひ、日本でも導入してほしいですね!

締め切った寝室は、要注意!

前回(←あなたの脳と遺伝子に与える悪影響とは)でも、寝室の温度は18.3度がよいとお話しました。もう一つ大切なのが、十分な酸素量を確保することです。

窓を少し開けるか、せめて寝室の部屋のドアを開けておくだけでも、空気の循環が改善されます。良い睡眠を得るためにも、二酸化炭素が溜まる部屋になることは避けましょう。

食事は、7時~19時の間に済ませる

「朝は王様のように、昼は王子のように、夜は貧者のように食べよ」という、古の知恵から生まれた西洋の諺があります。

朝にしっかり食事を摂ることで、体内時計のリズムが整い、いつ眠り、いつ覚醒するべきかを知らせてくれます。

19時以降に重めの食事を摂ると、翌日に備えて休息を取るはずの腸は、夜勤シフトで働かざるを得なくなり、体内時計も混乱し質の悪い睡眠につながります。

軽めの夕食を早めに摂れば、朝起きて、脳と身体を元気いっぱい活動させようと腹時計が鳴り、エネルギーを補給するよう仕向けます。

体に良い食物繊維も食べる時間に注意

多くの炭水化物や単糖類や二糖類、そしてバターやチーズ、赤身肉の脂である飽和脂肪酸が多い夕食は、深い眠りを妨げることが分かっています。

また、健康に良いからと、過ぎた量の玉葱や食物繊維も摂取すると腸内にガスを発生させ、夜間における腸の休息を妨げるので、晩ご飯をガツンと摂っている人は、要注意です。

わたしたちは夕食がメインで、19時を過ぎてようやく食卓につきます。しかもアルコールやテレビ、スマホと、睡眠の邪魔ものだらけ。

記憶する力(ノンレム睡眠)、記憶したものを応用する力(レム睡眠)も衰えた状態が続くことになります。

そうならないためにも、朝食をメインにして、太陽光を浴び、夕食を軽くしてブルーライトを発するテレビや携帯電話を夜は避けるようにしましょう。

脳内の活性酸素

脳の神経細胞がエネルギーを消費した時に生成されるのはアミロイドβだけではなく「活性酸素」も産出されます。
昼の間はサーチュインという酵素が抗酸化に働いてくれますが、残念なことに、睡眠中にはあまり機能してくれません。

夜起きている時間が長く続くと引き続き多くの活性酸素が産出されるので、認知症発症の原因にもなります。

メラトニンが活性酸素を除去

暗くなると脳の松果体から出始めるメラトニン。じつは、細胞の酸化を防ぐ抗酸化物質です。脳に留まるだけでなく、血液脳関門も通り抜け体全体に行きわたります。

生殖細胞を保護・活性化し、ホルモンバランスも改善せるので、不妊に悩む方もしっかりメラトニンが出る生活をしましょう。
さらには、乳がんなどをはじめ、腫瘍から伸びる新しい血管の成長を抑制する働きまで持っています。

外から摂り入れるメラトニン

温かい飲み物は精神をリラックスさせますが、子どもの頃ホットミルクを飲むとよく眠れるようになった記憶はございませんか。
牛さんも夕方にはメラトニンを分泌しはじめます。夜に搾った牛乳に含まれている可能性が高いのです。

人間も同様で、夕方以降の母乳にはメラトニンが含まれているので、赤ちゃんはすぐオネムになります(笑)。

なお、メラトニンは動物だけでなく植物にも含まれています。
なかでもタルトチェリー(酸っぱいサクランボの1種)など有名です。ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんね。

このジュースを朝と就寝1~2時間前の1日2回、240ml飲んでもらった実験では、平均1時間半近くも長く眠れるようになったそうです。

メラトニンのお薬

そんな話を聞くと、早速メラトニンのサプリが欲しい、と思ったりしていませんか(笑)。

海外へ行く際に西へと向かい、日が短く夜が早く来てしまう場合には、メラトニンの薬やサプリメントの使用は良いとしても、他のサプリメントと同様、高濃度のメラトニン長期服用が体に及ぼす影響の是非は議論されている段階で、毎日の使用は避けた方がよさそうです。

タルトチェリーに限らず、果物をお風呂上りやお休み前に摂るのもよいようですよ。
生絞りのフレッシュジュースを少し温めて工夫してみてはいかがでしょうか。
評価をお願いします

最近の記事