食の欧米化が進む現代社会ですが、ここでクイズです。
日本人の一日の平均カロリー摂取量は、戦後間もない1955年(昭和30年)とくらべてどのくらい変化したでしょうか。
次の①から④のうち1つ選んでください。
①減少 ②1.4倍 ③1.7倍 ④2倍以上
肉類を中心とした高カロリーの欧米食を口にする機会が増えたことから考えると、②から④を選択したくなります。
しかし、意外にも正解は①の減少です。
2000年代に入ってからは、ダイエット指向の高まりとともに摂取カロリー値が低迷しているのが現状です。
摂取カロリー値が低くなり、スリムな体型を手に入れた人は、はたして健康なのでしょうか。
隠れ脂肪肝に要注意!
2019年放送のNHKスペシャル『隠れ脂肪肝が危ない』が、大きな反響を呼びました。
肝臓に脂肪が蓄積された状態を脂肪肝と呼びます。
血液検査で肝機能の数値が正常だった50人に超音波診断をすると、なんと3割に脂肪肝を発見。これを「隠れ脂肪肝」といいます。しかも、肥満体型の人だけでなく、スリムな若い女性も含まれていたのです。
肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、病状がかなり進行しない限り異変に気づきにくいという特徴があります。隠れ脂肪肝を持つ日本人の数は1000万から2000万人と推定されています。
この70年間で、摂取カロリーは減っているものの、魚を除く肉類の動物性脂肪の摂取量は、なんと5倍以上になっているのです。
特に女性はダイエットのために炭水化物を控える傾向があるため、動物性脂肪の摂取比率が高くなってしまい、肥満体型でない女性でも脂肪肝になりやすいのです。
脂肪肝が悪化すると、当然老化が進みますし、やがて肝硬変になり、がんへと進行する危険も高まります。
また、昨年の大阪大学の研究によると、絶食すると脂肪組織が中性脂肪を放出するものの、体は緊急事態と判断し、エネルギーを確保するために、その放出された脂肪を肝臓が溜め込んでしまうことがわかりました。
これは、老化が進むと脂肪細胞のオートファジーが進み、脂肪を蓄えられず、その代わり、肝臓に脂肪が貯蔵されるのと同じことだというのです。
老化速度に個人差あり!
最近、興味深い論文が発表されました。
ニュージーランドの1037人の市民を、26歳から45歳までの20年間追跡した研究です。この研究では、心肺機能、腎機能、免疫機能など19種類の測定データから老化ペースを算出しました。
その結果、1年経過すると2.4歳老化が進んだ人がいる一方で、0.4歳しか老化が進まない人もいることがわかりました。
また、老化速度の速い人は見た目も実年齢より老けて見え、不健康に見えるということも示されています。
テレビを見ていても「この芸能人、50歳なの?!」とびっくりすることがよくあります。
10年振りに中学校の同級生と集まる機会があったのですが、たしかに見た目年齢に相当のバラつきがあったのが結講なショックでした。
青年期以降の老化速度には個人差があります。中年期からは、食生活や運動習慣に気を遣うようにしましょう。
抗老化作用を持つ食品成分
抗老化に役立つ食品はたくさんあります。そのうち、いくつかの成分を取り上げてみましょう。
たとえば、玉ねぎなどに含まれるケルセチン(ポリフェノール)。
高齢マウスに4週間、ケルセチンを含む合剤を経口投与したところ、歩行速度の上昇、筋力の増加が認められました。
イチゴなどに含まれるフィセチン(ポリフェノール)については、新型コロナウイルスに感染させた加齢マウスに投与したところ、高い確率で死亡を抑制。
また、大豆に含まれるイソフラボンは女性ホルモンの代わりとなり、骨粗しょう症、虚血性心疾患などの発症を遅らせます。
ブドウやブルーベリーに含まれるものとして、長寿遺伝子のサーチュインを活性化させ、寿命延伸効果があるレスベラトロールも注目されています。
色々なポリフェノール(フラボノイド)を同時に摂取することで、体の中で相乗効果が生まれることは、以前より何度もお話ししてきました。
時とともに徐々に進行する老化は正常な生命現象ですが、病気のように薬で治すものではなく、日常の生活の中で植物の成分を賢く活用し、老化を遅らせることが大切です。
大豆が日本人の健康を守ってきた
大豆は動物性脂肪を含まず、良質な大豆油が20%。そして30%が良質なたんぱく質でできています。
大豆におけるたんぱく質のうち、40%がイソフラボンなどを含むグリシニンです。それ以外では20%がβコングリシニンで、最近の研究で脂質代謝改善効果、抗肥満効果が認められ、脂肪肝への予防効果が明らかになりました。
大豆は非常に栄養価の高い食材であり、マウス実験では血糖値の低下、血中総コレステロール値の減少、血中インスリン濃度の低下も確認されています。
私たち日本人が日常の食生活で口にしてきた味噌、醤油、豆腐、納豆、おから、大豆もやし、きな粉、湯葉、枝豆はすべて大豆製品です。
日本人の食に欠かせない食材の多くが大豆からつくられており、肝臓にもやさしいのです。
悪玉コレステロールを減らすには?
脂質であるコレステロールの80%は、肝臓で作られます。
私が言歩木に入社する5年前、健診結果をもとに医師から告げられました。
「LDL(悪玉)コレステロールの値が高いので気を付けてください」
この数値が高くなると余分なコレステロールが血管の壁に沈着し、動脈硬化が進み、心筋梗塞や狭心症、脳梗塞などを発症します。
食後のデザートを控えるなど努力したつもりでしたが、次の健康診断でも結果は一向に改善されず、もやもやとした気持ちが数年続いた経験があります。
LDLコレステロールを下げるためには、動物性脂肪の摂取を減らし、魚類、野菜類、豆類、キノコ類などを幅広く積極的に摂取する食生活を送ることが大切です。
ちなみに私の場合、何年間も下がらなかったLDLコレステロールが、言歩木の酵素を飲むようになって簡単に下がったのです。これも植物の力によるものだったのかもしれません。
母乳とサツマイモの健康効果
母乳には、乳飲み子の成長に必要なすべての栄養素がバランスよく配合されています。
母乳に含まれるオリゴ糖にはビフィズス菌を増殖させる作用や免疫力を高める働きがあります。
ところが、母乳を飲むのは乳児期のみ。腸内のビフィズス菌は年齢とともに減ってしまうため、普段の食事から意識して食物繊維を摂り、ビフィズス菌の生育を促すことが不可欠です。
日本人の食物繊維の平均摂取量は15gです。20gを目安にしたいのでイモ類、豆類、海藻類など多めに摂取したいところです。
おすすめはサツマイモ。現在の食事に、小さなサツマイモ1本分をプラスすることで、不足しがちな食物繊維を補うことができます。しかも、ビタミンやミネラルもたっぷり。皮にはカルシウムやアントシアニンなども入っています。
腸内細菌を腸内で育てよう
『腸内細菌を腸で飼育している』という気持ちを持つことは、腸内フローラを健康に保つためにも大切なことです。
食と抗老化の関係は切っても切り離せないものです。
野菜や大豆以外にも、老化を遅らせ健康寿命を延ばす食品として、玄米茶や緑茶を一杯、手のひら半分のナッツ類、果物類は一日200gを目標に摂取しましょう。
また、わたしたち日本人は果物類を100g程度しか食べないので、意識してプラス100g摂るようにしたいものです。
日々口にするものが、腸内環境をはじめ、抗老化や健康に直接影響するのだということを改めて意識し、健康寿命を延ばしていきたいですね。