コラム

売り渡される食の安全②

前回「売り渡される食の安全①」では、お子さんの尿から除草剤の成分が検出された!というニュースをもとに、自然由来のものを口にすることの大切さをお伝えしました。

今回は、ゲノム編集の是非や「種子法」の観点から、食の安全について考えていきたいと思います。

ゲノム編集を規制する諸外国と、安全だと妄信する日本

ゲノムとは、遺伝子と染色体すべての遺伝情報を意味します。そして、ゲノム編集とは、遺伝子組み換え食品とは違い、他の生物の遺伝子を使わないかわりに、動植物自身が持つ遺伝子を切り取ったり書き換えたりする技術のことをいいます。

遺伝子組み換え作物に対して一貫して否定的なスタンスを取ってきたヨーロッパ連合。18年7月の段階で、司法裁判所が「ゲノム編集は遺伝子組み換えと変わらない」と判断し、安全性を危惧したのでした。

ひるがえって日本はどうでしょうか。

日本の環境省はなんと翌月の8月に、「ゲノム編集は遺伝子組み換えではない」とする見解を発表しました。

その後、わずか4回の審議で「ゲノム編集では別の動植物の遺伝子が新たに組み込まれていないから、従来の品種改良と同じで安全である」とする報告書を取りまとめたのです。

新聞やテレビでの扱いも小さく、問題意識を持って報道されなかったのです。

そして半年後には、厚生労働省へ届け出るだけで、市場への流通を認める方針を固めてしまいました。

未知の領域がまだまだ多い遺伝子組み換えとゲノム編集。口に入れる食品の扱いに関して、あまりにも拙速な決め方です。

日本の種を守ってきた「種子法」

日本のお米をはじめ、麦や大豆などの安定供給と多様性を守る上で大切な「種子法」という法律がありました。

種子法には、優良な種子を国が責任をもって供給しなくてはいけないと定められており、「食料を確保するには何よりも種子が大事だ」ということが明確に位置づけられ、優良な種子の保護、そして新しい品種を生み出す状況を後押ししてきました。

寝耳に水の「種子法廃止」

政府は18年4月、長年運用されてきた種子法を廃止してしまいました。

種子法は、私たちの「食べる」という命に直接かかわる法律であるにもかかわらず、廃止についてメディア等で報じられておらず、長く農政にかかわってきた人でさえ寝耳に水だったといいます。

なぜ、種子法を廃止したのか

政府の説明では、種子法を廃止するのは、民間企業に種子の開発事業への参入を促すためだといいます。

しかし、種子の開発にはお金と時間がかかるため、資金力のある企業でなければ参入が難しいという現実があります。

モンサント社などの外国の大企業が、米国政府を使い日本に圧力をかけ、巨額の資金にものを言わせ自社の種の供給を拡大しようと試みたものと思われます。

外国企業が最初は安く種を供給。作付け効率を重視するあまり、種は単一の品種に統合されるため、多様な品種は淘汰される結果になってしまうでしょう。

日本のお米のシェアを奪い、そののちに価格を上げる、ということですね。

70年代に米国政府が日本車の輸入を止めるぞと日本政府に圧力をかけ、防カビ剤まみれのレモンを安く輸入させ、日本の農家に国産檸檬の生産を断念させてから価格を高騰させたというサンキスト・レモン戦略をほうふつとさせます。

日本が積み上げてきた知見を外資系企業へ提供することに

政府は、種子法の撤廃だけでなく、「農業競争力強化支援法」なるものを17年8月に施行していました。

新法の内容を簡単に説明すれば、種子法が制定されて以降66年もの歳月をかけ苦労して蓄積してきた種子事業に関する知識やノウハウを、民間企業へ提供させようとしているわけです。

努力の結晶ともいえる日本の主食お米までも、なぜ民間企業に提供しなくてはいけないのでしょうか。

政府は「多様なニーズに対応するためにも、民間の力を借りる必要がある」と理由づけをしますが、結果として日本の種子事業を外国の大企業へ従わせることになりえます。

大阪のカジノリゾートの運営元が、実は外国企業であるというニュースがありました。これと同様に、日本の種子が既に外国企業へ渡っている実態もあります。

種苗(しゅびょう)法改正の目的とは

女優の柴咲コウさんが反対表明し話題になったのですが、20年11月に種苗法が改正されたことをご存じでしょうか。

じつはこの種苗法の改正案は、「モンサント法案」といわれるものです。

政府は「種苗法改正は優良品種の権利が海外に侵害されてしまうのを防ぐため」と説明していますが、真の狙いは自家増殖の禁止といわれています。

つまり、自分で栽培した種や苗の使用ができないのです。それを使用するためには許諾料を支払うか、毎年新たに種子を購入する必要があり、農家さんの経営を圧迫することは間違いありません。

世界の種子の権利を7割独占している外国企業らが、ますます幅を利かせ利権を握るようになり、種苗の値段が上がっていくでしょう。

種子法の廃止、その後にできた悪法によって農業のありかたが大きく変えられようとしています。

これは、農家さんたちだけの問題ではなく、私たち日本人が日々食べているお米の味や価格、安心・安全につながっていくものです。

反撃! 日本の食は「地方」が守る

種子法が廃止されることへの危機感から、地方では条例を作って種子を守っていく動きが加速しました。

真っ先に動いたのが新潟県。新潟の米を守ろうと『種子条例』を制定しました。

兵庫県では、山田錦というお米を原料とする日本酒が仕込めなくなると危惧した生産者が、種子条例の制定へ向けて動きました。

23年4月現在では、33もの都道府県が種子条例を制定。日本の食を地方から守る動きが活発化しています。

お住まいの県には種子条例があるでしょうか?

全国の農家さんたちの努力の賜物である安心で美味しい食品に感謝し、これからも国産品を選ぶようにしたいですね。

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