コラム

苦味の食材で春の病を絶つ

会席料理の世界には昔から「春には苦味を盛れ」という言葉があり、日本人は古くから、春になると芽吹いてくる苦味の食材を上手に利用してきました。
陽気が高まる春は人の身体の血液もたかぶりやすくなり、頭痛やめまい、動悸、精神不安、血圧の上昇などの症状が現れやすくなります。ホルモンバランスも乱れがちになり、生理不順や生理痛などが起きやすくなる人もいるでしょう。
排除されない古い血液が体内に溜まっていると血液の流れが悪くなり、脳梗塞や心筋梗塞など恐ろしい病気に見舞われることになりかねません。
苦味の食べ物には、そのような病気の原因となる体内の毒を排泄して、血液の流れをよくする働きがあります。

春の食卓を楽しくする筍料理のひとつ、【筍の木の芽和え】は、陰と陽のバランス食。筍は苦味の陰の食べ物。一方、木の芽(山椒の新芽)は辛味の陽の食べ物です。
苦味は体を冷やし、辛味は暖める性質で、両方合わせてバランスを取っているのです。
【ウドの辛子和え】も、ウドは苦味の寒性(陰)、辛子は辛味の温性(陽)で、陰と陽の組み合わせでひとつの味の偏りによる弊害を防いでいます。
昔から伝えられている日本の伝統料理は、それぞれが五行説の理にかなった調理法になっていることに驚かされます。私たちの先祖は古来より、こうした食べ物の特性に気づいて食の偏りを防ぐ尊い調理法を遺してくれているのです。

 

心臓は血液を全身に行き渡せるポンプ役として、生まれてから死ぬまで休まず動き続ける臓器です。東洋医学では、人間の精神活動・思考活動とも関連しています。心臓の動きが悪くなると、胸苦しさや不整脈のほか、血液の循環不良、動悸、息切れ、不眠、動脈硬化、心筋梗塞などが現れるようになります。苦味の食材は、心臓の働きを補って、炎症を鎮めて尿の出を良くし、軟らかいものを引き締めて固め、湿り気を乾かすなど多彩な働きをもって人体を守っています。身近な食べ物では、春から夏に採れる山菜、フキノトウ、ウド、ゴーヤ、カブ、緑茶などです。おもわず顔をしかめてしまう苦味の成分は、塩化マグネシウムや硫酸マグネシウム。数多くの酵素の働きを側面からサポートします。

筍の木の芽和え


【材料】
茹で筍  300g
木の芽みそ(西京みそ:100g、砂糖:大さじ1、酒:大さじ、出汁:大さじ2、卵黄:1個、木の芽:30~40枚)
薄味用(昆布出汁、薄口醤油、みりん)

【木の芽みその調理】
①木の芽は手でしごいて葉だけを取る。
②木の芽の葉をさっと茹でて水にとり、絞って細かく刻んでおく。
③調味料を鍋に入れて火にかけ、ぼってりしてきて熱が通ったら火を止めて卵黄を加えてよく混ぜる。
④最後に木の芽も加えて混ぜ合わせて完成。
【つくりかた】
①茹で筍はサイコロ状に切る。
②鍋に昆布出汁をはり、筍を入れて火にかけ、薄味用(昆布出汁、薄口醤油、みりん)を加えて炊き上げる。
③鍋の熱がさめたら汁気をきって、木の芽みそで和えて完成。

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