朝晩の寒暖差が大きくなるにつれ色濃くなる紅葉は、冬支度の合図でもあり、季節感があります。
新鮮な空気に満ち溢れた紅葉の中を鳥のさえずり、木々がそよぐ音を聞きながら歩くことは、心と身体をリフレッシュさせますが、それ以上の神秘的な力が植物には備わっていました。
だから森林浴は体にいい
ドイツでは100年以上前から、森林浴が人の身体にとって「何か良い作用」があることが、経験的に知られていました。
その神秘の力は1930年頃、ロシアのトーキン博士によって、『植物を傷つけると周囲の細菌などが死滅する現象』として発見されました。
植物が傷つくと傷口を細菌から守るためフィトン(植物)チッド(殺す)という不思議な香りを発散します。
有害な微生物には殺菌効果を発揮しますが、多くの動物や人間にとってはプラスとなる物質。私たちは植物のその恩恵にあずかってきたのです。
【フィトンチッドの効果1】
フィトンチッドは揮発性の物質です。これを含む森の空気をたくさん吸うことで、新陳代謝が活発になり、細胞の若返りを促進します。神経の興奮を抑える働きがあり、リラックスするとともに集中力が増すことが実験でも解っています。
【フィトンチッドの効果2】
岐阜県健康づくり財団が、平成10年に都市環境と森林環境のストレス度の違いを調べたところ、都市よりも森林環境に住む人の方が、がん細胞を退治する免疫細胞の量が2倍、免疫抗体の量は6倍も多いと解りました。
短期間の森林浴ではどうなの?
森のある地域に住めない都市部の方もいらっしゃると思います。そこで2日間の森林浴でも効果があるか、日本医科大学の研究チームが実験をしました。
【抗がん免疫細胞が1ヵ月も持続!!】
13人の女性に2日間、宿泊施設に隣接した雑木林と杉林の森林遊歩道で1日目は午後2時間、2日目は午前と午後2時間ずつ過ごしてもらいました。
その結果、抗がん免疫細胞の働きが活性し、その効果は30日ほど持続することが明らかになりました。
【ストレス解消にも働く!!】
ストレスについては、尿に含まれるアドレナリンの濃度を指標にして測定しました。
その結果、森林浴をするとアドレナリン量が減少し、ストレスが解消されていることが明らかになりました。(※尿中のアドレナリン濃度については、排泄量が一定であるクレアチニンの1gあたりに対する成分濃度【尿中クレアチニン補正】で算出)
このリラックス効果は、樹木の多い公園で過ごすことでも得ることができます。
植物の力を健康作りに活かす
お寿司屋さんで使われるヒノキの飯台や、笹の葉、シソは見た目の美しさだけでなくフィトンチッドの殺菌力を利用したもの。また野菜や果実の赤や黄色の色素も、植物が自らを守るものであると同時に、私たちの身体に有益な生体調節機能をもった栄養素です。
これから紅葉の季節です。新緑の季節とは違った、色鮮やかな紅葉を全身に感じてみてはいかがでしょうか。
なお、日の出から午前11時頃までがフィトンチッドの飛散量が一番多い時間帯です。
蚊も少なくなる季節ですが、念のため森に行かれる時は、虫よけスプレーなどで、しっかりガードして下さいませ。
健康管理士の松渓(マッケイ)と申します! 若い頃はスキー三昧の日々を送っていましたが大ケガをして引退。そこから健康のありがたみに目覚めました。皆さまの日々の暮らしに「ちょっと役立つ」情報を随時発信していきますので、参考にしていただければ幸いです。
残念ながら、25年ほど健康関連の業界に身をおく私からすると、世にあふれる健康情報の中には「?」と首をかしげたくなる内容も。そのため、つい辛辣な言葉もでてしまうことがあると思いますが、どうかご容赦くださいませ。