古くから女性特有の症状といわれてきた【冷え性】。
女性の場合、20歳前後と更年期に多発しやすいのが特徴です。
寒いときとは関係なく、普段でも手足などの冷えを感じるものをいいますが、生活習慣の変化から、最近では年齢や性別を問わず、冷えを訴える人が増えています。
現代の生活には、過度なダイエットや体を冷やす食生活、運動量の低下など、冷えの誘引がたくさん。
検査を受けても明らかな異常が見つけられないものが多いですが、東洋医学ではひとつの病として考えるため【冷え症】とも呼びます。
冷え性の症状
冷え性は大きく分けて下記の4タイプに分かれていて、冷える場所などは人それぞれです。
①全身が冷える【全身型】
②手足の先が冷たい【四肢末端(ししまったん)型】
③上半身は火照っているのに下半身が冷えている【上熱下寒(じょうねつげかん)型】
④お腹の中心が冷える【内臓型】
体の冷え以外での症状として、朝の寝起きがツラく疲れやすい、立ちくらみやめまい、脱力感や顔色が悪いなどがあげられますが、みなさまのご体調はいかがでしょうか?
冷え性対策として、温熱性の食べものがおすすめです。
・牛肉、羊肉、鶏肉
・うなぎ、イワシ、マグロ
・ニラ、カボチャ、ネギ、生姜、ニンニク、唐辛子
深刻なのは四肢末端型
私たちにの体には、体温を一定に保とうとする恒常性機能があるため、冷えを感じると一生懸命に熱をつくって温めようとします。
その結果、過剰な熱が生み出され、上半身に熱が上昇して冷えとのぼせが同居するかたちになるのです。
『冷えのぼせ』は、いわば冷えが重症化してしまった状態になります。
頭や顔が火照るのは冷えの症状のひとつであって、他のタイプの冷え同様、体を温める食材で冷え対策をすることが必要です。
冷えの要因
体は血液が全身を巡ることで一定の体温を保たれていますが、運動不足や高カロリーな食事、過食などによって血液がドロドロとして流れにくくなると末梢の血管まで血液が行き渡らず、手足の先が冷えてしまいます。
血液の流れが悪くなると、古い血液が滞った『瘀血(おけつ)』の状態になり、一層血の巡りが悪くなって体が冷えるという悪循環に陥ります。
ご存知のとおり、中医薬学では【血の巡り】【気の巡り】【水の巡り】を重要視します。
意外な冷え性の要因として『水分の摂りすぎ』もあげられます。
近年、美容目的で水を2リットル以上飲む方が多いですが、海に囲まれた湿度の高い土地に住む日本人には合っていません。
寒い時期でもビールや牛乳を多く飲んだり、生野菜のサラダを食べるような食習慣を続けると、余分な水分が蓄積されて冷えを助長する一因となります。
消化器系の働きが低下すると十分に食べものが消化されず、体を温めるエネルギーを補うことができないため、冷えを招きます。
冷えと花粉症の意外な関係
中医薬学の観点からすると、アレルギー疾患を引き起こすおおもとの臓器は、主に肺であると考えられています。
鼻は肺の状態を表す窓口であり、くしゃみや鼻水などは肺に入った湿邪が原因です。
体内の余分な水分が体のあちらこちらに溜まりやすくなり、むくみや頭痛の原因にもなります。
花粉症で処方される代表的な漢方に「小青竜湯(しょうせいりゅうとう)」が挙げられますが、身体を温める生薬が入っています。
花粉症の症状を和らげるためにも、体を暖めて余分な水分で肺を冷やさないようにすることも大切です。
ゆっくりと湯船に浸かったり、運動をして代謝をあげることも重要ですが、忙しくてなかなか難しいという方は、まずは食事で内臓を温めるところからはじめましょう。
桜が各所で咲きはじめる頃ですが、まだまだ寒い日もあり油断できない季節です。
花粉症を和らげたいと考えている方は、この機会に体温を上げる対策を試してみてくださいね。
古代の冷え対策薬膳レシピ
漢方医学では、高熱を伴う病を『傷寒(しょうかん)』といいます。
この傷寒について詳しく記載されている『傷寒論』に、冷え性を改善するレシピが載っていたのでご紹介します。
当帰生姜羊肉湯(とうきしょうきょうようにくとう)①羊肉500gは2cm角に切り、沸騰した湯に入れ、白くなったらいったん取り出す。
②鍋に羊肉、当帰(セリ科の多年草)20gを入れてひたひたに水を入れ火にかける。
③スライスした生姜30g、紹興酒大さじ3を入れて沸騰したら40分煮込んで完成。
花粉症必見 四味バランスレシピ
わけぎとあさりの酢味噌和え①わけぎ1束は根付きのまま1〜2分ゆでてザルにあげ、水気をきって冷めたら根を除いて4cmの長さに切る。
②あさりは鍋に入れて酒適量を加えてフタをして、酒蒸しにする。殻が開いたら取り出し、身と殻に分ける。
※あさりの蒸し汁はこのあと使うのでとっておく。
③鍋に白味噌大さじ3、はちみつ大さじ1/2、みりん大さじ2、あさりの蒸し汁大さじ1を入れて弱火にかけ、練り合わせる。
④火から③の鍋をおろし、粉辛子小さじ1/2を入れて混ぜ、わけぎとあさり、彩りとして茹でたニンジンやごまと一緒に和えれば完成。
「東京薬膳研究所」代表。本場中国で薬膳を学び、帰国後は日本の気候風土に合った薬膳理論を研究。和食薬膳・食養研究の第一人者である。『食は薬なり』を全国へ広めるため、執筆活動のかたわら各地で講演を行い活躍中。著書に『決定版 和の薬膳食材手帖』『旬を食べる和食薬膳のすすめ』(すべて家の光協会)などがある。