鼻がつまって息苦しい、ドロッとした黄色い鼻水がでる、食べ物の匂いがわからない…。このような鼻の症状の原因は、もしかしたら副鼻腔炎(蓄膿症)を発症しているからかもしれません。患者数200万人ともいわれている身近な病気ですが、意外なところから発症することもあります。
蓄膿症の症状とは(前編)
1.これって、副鼻腔炎(蓄膿症)?
2.濃くドロドロの鼻水は要注意
3.鼻と副鼻腔の構造
4.放置すると慢性化
5.増加する「好酸球性副鼻腔炎」
6.虫歯が原因で発症することも
長引く副鼻炎の予防するには(後編)
1.副鼻腔炎を予防するには
2.食生活にも注意
これって、副鼻腔炎(蓄膿症)?
こんな症状が見られたら、副鼻腔炎にかかっているかもしれません。自己チェックしてみましょう。
濃くドロドロの鼻水は要注意
風邪をひいたとき、治りにくく鼻水が次第に濃くてドロドロになった経験はありませんか。じつはそれ、風邪ではなく副鼻腔炎の兆候かもしれません。
ちなみに、副鼻腔炎は一般的に「蓄膿症」とも呼ばれます。 風邪の主要原因はウイルスですが、風邪症状によって体力が低下し、ウイルスとは異なる細菌による二次感染が発生することがあります。これらの細菌が副鼻腔内で炎症を引き起こすのが副鼻腔炎の原因です。
鼻と副鼻腔の構造
副鼻腔は鼻の周囲にある空洞のこと。 左右にそれぞれ4対(前頭洞・蝶形骨洞・篩骨洞・上顎洞)あり、全部で8個あります。自然口と呼ばれる通り道で鼻の中(鼻腔)とつながっており、 副鼻腔からでる鼻水などの分泌物や異物は、この道を通って排出されます。
しかし鼻腔内が炎症し副鼻腔炎がおきると、鼻水を粘り気のあるものに変え繊毛の機能を低下させます。また副鼻腔の入り口は狭いので、鼻水によって詰まりが生じ、内部の炎症や膿の蓄積が発生することもあります。
これを「蓄膿症」と呼びますが、膿の症状だけでなく、粘膜の腫れも含まれます。副鼻腔炎にかかると、頬や目の奥の痛み、頭痛、後鼻漏(鼻水が喉に垂れる現象)、嗅覚障害が起こる可能性があります。
放置すると慢性化
副鼻腔炎は早期に適切な治療を受けることが重要です。1ヶ月未満で治癒する急性副鼻腔炎と、3ヶ月以上持続する慢性副鼻腔炎に分類されます。
慢性の副鼻腔炎になると、鼻内にポリープ(鼻茸)ができることがあります。 慢性副鼻腔炎の治療は、抗菌薬を長期にわたって服用するのが一般的。それでも症状の改善が見られない場合は手術を行います。手術は通常、両側の鼻を同時に処理し約一週間の入院が必要です。
副鼻腔は目や脳に近く、まれに複視・視力低下・失明・髄膜炎・脳内膿瘍など、危険な合併症を引き起こすことがあります。首の動きに制限があったり、食欲不振などの症状が表れたら、合併症の可能性があります。
この事態を防ぐためにも、風邪症状が改善せずに鼻水がドロドロになってしまったら、すぐに耳鼻咽喉科を受診しましょう。
増加する「好酸球性副鼻腔炎」
近年、抗菌薬の開発などによって慢性副鼻腔炎の発生率は低下しています。しかし難治性の「好酸球性副鼻腔炎」が増加しており、平成27年に難病指定されました。この種の副鼻腔炎は、好酸球と呼ばれる白血球が過剰に活性化してアレルギー体質の人に発症し、粘着性の鼻水や鼻茸、鼻詰まり感、嗅覚障害を引き起こします。
アレルギーといえば花粉症を思い浮かべるかもしれませんが、現時点では花粉症との関連性は指摘されていません。確かな関連性があるのは喘息との関連です。喘息治療の進化に伴い、ステロイドの内服薬から吸入療法が一般的になりました。
しかし吸入療法では薬物が気道に到達する一方、鼻には届きません。その結果、喘息の内服薬が抑えていた『隠れた副鼻腔炎』の症状が好酸球性副鼻腔炎として現れ、患者数が増加したと考えられています。
好酸球性副鼻腔炎は通常の副鼻腔炎の治療薬が効かないためステロイドの内服が唯一の選択肢で、改善しない場合は手術が必要です。
虫歯が原因で発症することも
副鼻腔炎は風邪の悪化が主な原因ですが歯の健康状態によっても発症します。これは上の歯の根っこが、上顎洞という副鼻腔に近接しているためです。人によっては歯根が実際に上顎洞内に突き出ていることもあります。
そのため虫歯や歯周病を無視すると、炎症が上顎洞まで広がり、「歯性上顎洞炎」という副鼻腔炎を引き起こす可能性があるのです。
またインプラントをして副鼻腔炎が発症するケースがあります。このような場合は歯科医師および耳鼻咽喉科医に相談し、歯根治療やインプラントの管理、重症の場合は上顎洞手術を検討します。
後編 は、副鼻腔炎の予防法をお知らせいたします。
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