コラム

誰もがなる可能性がある「強迫性障害」をご存知ですか?その2

前回は自分の意に反して繰り返し頭に思い浮かぶ強迫観念と、その不安を打ち消すために行ってしまう強迫行為についてお話ししました。今回は家族や周りの人が出来ること、具体的な治療法についてお話しいたします。

強迫性障害 家族にできること

ご家族が強迫性障害に気づいたときは、少しでも理解してあげることが大切です。
ご家族がかけてしまいがちな「気にしないように」、「こだわらないように」という言葉は、患者さんにすれば『自分がおかしいのはわかっていて、こんなに努力しているのに、家族のみんなは私の不安や辛さをわかってくれない』と、心を閉ざすきっかけとなってしまいますので、避けましょう。
患者さんと強迫性障害について話をするときは、「何度も繰り返し、時間がかかったりして、心や体に負担がかかっていないか」、「神経も疲れていないかと心配している」と声をかけてあげてください。そうすることで家族に相談しやすくなります。


また、診察を勧めるときも、「一度、病院で話を聞いてみようか」と提案型の言い回しにしたり、「病気」の代わりに「疲労」や「苦労」などの言葉に変えたりすると、診察を受け入れやすくなります。
もし本人が聞き入れない場合は、家族だけで病院に相談し、病気に対する考え方や患者さんの気持ちに寄り添う方法を教えてもらいましょう。

強迫性障害の治療法は2つ

強迫性障害(OCD)の診断は主に心療内科で行います。治療法には、薬物療法と認知行動療法の2つがあります。

今までの療法【薬物療法】
OCDの治療には、SSRIという脳内の神経伝達を改善して意欲を高め、憂鬱な気分などを改善する薬を用います。

最初は少量から試し、体調をみながら服用量を加減します。この薬は効果があらわれるまでに3~4週間かかるので、変化がなくても焦る必要はありません。徐々に気分が落ち着いてきます。
SSRIは、副作用が少ない薬ですが服用開始時に吐き気や口の渇き、下痢などの副作用があらわれることがあります。不快な症状は胃腸薬などで対応できますので、主治医に相談しましょう。

新しい療法【認知行動療法】
この療法は心理学を用い、リラックス体験をしながら、考え方や視野・行動を少しずつ修正して、緊張を克服、自由に考えて自信を持つようにする方法です。
この治療は、患者さんがこれまで恐れたり避けたりしていた状況にあえて自分をさらし、その後、この不安や不快感などの強迫観念を打ち消すために何度も繰り返してしまう自身の強迫行為をしないようにします。
例えば不潔恐怖症の人に、ドアノブやトイレ使用後など、本人が汚いと思うものを、触ってもらう。その後、手洗いは禁止。
まずは10分、手を洗うのを我慢し、自分の不安の変化を観察します。
【気持ちの変化】
トイレを使用しても手洗いできない。不潔だ!
   ⇩
不安!イライラが一気に上昇。
   ⇩
10分後、不潔な感じはするけど、イライラ感は落ち着いた気がする。
   ⇩
不安感は時間が解決!まずは10分我慢。徐々に時間を伸ばしていきます。
強迫行為をしなくても気分が落ち着くことを実感すれば、行為は必要ないと理解して、段々としなくなります。
薬物療法は心療内科で受けられますが、認知行動療法は、強迫性障害を熟知した医師がいることが前提になります。まだ新しい治療法なので、熟練した治療者は少ないのが現状です。
認知行動療法を受けたい場合は、地域の中核病院の心療内科に問い合わせたり、主治医に相談すると良いでしょう。

焦らずゆっくり治す

治療には時間がかかりますが、強迫性障害は少しずつ良くなっていきますので、焦らずに取り組んでください。
少し症状が残っていても、強迫観念に対して逃げずに立ち向かい、強迫行為をしない習慣が身についてくれば、徐々に落ち着いた生活が送れるでしょう。
治療で症状が改善しても、OCDは再発する場合があります。しかし、認知行動療法を経験していれば、そのリスクを避けることができます。

再発予防のために心がけたいこと

強迫観念が再度あらわれても「逃げない・繰り返さない」の認知行動療法で10分、我慢する習慣をつけましょう。
10分間我慢ができたら、次は20分と、だんだんと時間を長くしていくことで、不安は自然になくなるものだということが実感できるようになります。

落ち着いた日常のために

強迫性障害になる人は、まじめでちょっと頑固な人や、物事を徹底的に追求したがる人が多いようです。
それは一つの個性ですから、家族はそのような患者さんの性格を知っておき、前述のように「心や体、神経に負担がかかっていないか」といった、寄り添う姿勢で接してあげてください。悩んでいる患者さんは、症状が残っていても社会生活は送れます。「今」の自分にできることに目を向けることが、落ち着いた日常への第一歩になるでしょう。

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