カフェインというとコーヒーやお茶を思い浮かべますが、昨今の若い子供達はちょっと違うようです。
先日、久しぶりにあった小学5年生の姪が、放課後、バレーボールのクラブで練習する前に、コマーシャルでよく見かける「エナジードリンク」を飲むと元気が出るんだと話してくれました。
コーヒー、紅茶をすっ飛ばしていきなり「羽根が生えるアレ」や「野生に戻れるアレ」というわけです。
カフェインは適量であれば健康効果も期待できるかもしれませんが……。
医薬品としても使われます
コーヒーから発見された天然成分、カフェイン。コーヒー以外に緑茶、紅茶、ウーロン茶、ココアやチョコレートなどに含まれています。
また、これらの嗜好品には、カフェインの仲間でテオブロミンといわれるものや、テオフィリンといって、喘息の治療薬としても使われる物質も含まれています。
構造が似ている成分が医薬品として用いられているように、カフェインは薬剤としても使用されています。
さまざまな顔を持つカフェイン
世界各地で愛飲されているコーヒーやお茶。
香りや味を楽しむほかに、カフェインが持つ覚醒作用で、眠気の抑制、疲労感の軽減などを求めて摂る人も多いですね。カフェインはコーヒー豆などのように、もともと原料に含まれているほか、添加物として使用されているものがあります。
添加物は防腐や着色、香料など食品の製造過程で使用され、カフェインは苦味料として用いられます。この場合、眠気覚しや疲れをとる目的では配合されていません。
一方、医薬部外品の栄養ドリンク剤や風邪薬、鎮痛剤といった薬の有効成分としても配合されています。
コーヒーやお茶は、一杯で安らぎを感じる人もいれば、夜に眠れなくなる、動悸がする、めまいを起こすという人も…
このようなカフェインの作用は個人差があり、体内で分解する酵素の力や年齢、肝機能の違いによると考えられています。
ところが最近、薬ではないのにカフェイン摂取を目的としたドリンクが数多く販売されるようになってきました。
認識すべき過剰摂取の危険性
カフェインが含まれる飲料で注目されているのが、エナジードリンクという清涼飲料水です。仕事や勉強のときに眠気を覚ます、集中力が高まるという理由で、手を伸ばす若者が多いといいます。
松渓も昔はそうでした。〆切に追われ眠◼️打◼️やメガシ◼️キなどに手を出して乗り切ろうとしたものの、結局、力尽きて締切日を伸ばしてもらうこと度々。。。あの頃の眠気覚ましは、私に翼を授けてはくれなかったのです。
ちなみにこれらのドリンクには1本当たり100~200㎎ものカフェインが含まれおり、コーヒーやお茶とは比べようにならない量が配合されています。
近年、このようなドリンクやサプリメントを多量に飲み、死亡した例が国内外で報告されています。過剰摂取が原因だと考えられています。
これはカフェインに限ったことではありませんが、食品、さらに水といえども摂りすぎると中毒を起こしたり、命を落とすことがあると肝に銘じるべきでしょう。
日本でも販売規制が必要なのに
日本では、エナジードリンクはコンビニエンスストアなどで子供も購入可能です。
奇抜なデザインで目立つため、子供は興味本位で手にします。手軽に買える上に、元気が出るからと何本も飲んでしまい、健康被害が生じるのは予想できたはずです。
カフェインの働きは個人差が大きく、急性中毒、致死量の明確な数値がわかっていません。しかし、短時間に400㎎を超えて摂取すると中毒症状が出やすくなります。
ヨーロッパでは、子供へのエナジードリンク販売を規制したり、表2のようなガイドラインを作って、過剰摂取にならないよう提言しています。
なお、表2で計算した体重別コーヒーの1日量は次の通り。
コーヒー1杯(150㎖・カフェイン量90㎎とした)
また、表1と表2を参考にすると、体重が40㎏程度の人では、サプリメント1粒、エナジードリンク2本でも、安全とされる1日量を超えてしまうこともわかります。
子供やカフェインの代謝酵素が少ない人は、基準値以下でも表3のような中毒を起こすことが考えられるので、注意が必要です。
カフェインの禁断症状は?
カフェインには解毒剤がありません。軽症の場合は生命維持に必要な管理を行いながら、体内濃度の低下を待ちます。
重症の場合は、胃洗浄や人工透析を行いカフェインを除去します。
安易な気持ちでエナジードリンクを飲み始め、さらに強い効果を求めてサプリメントを使用する。その結果、依存症に陥ってしまう。カフェインも薬剤の一種であることを忘れてはいけません。
日頃からカフェインを多量に摂っている場合、摂取を止めると離脱症状(禁断症状)が現れます。
カフェインの最終摂取から12〜24時間後に激しい頭痛や著しい疲労感、脱力感などに襲われ、3週間続くことも。ダルくて立ち上がれないなど、生活に支障をきたす場合があります。
現在のカフェイン量を減らす場合、いきなりピタッと止めるのではなく、1日4杯コーヒーを飲んでいる人は、1週目は1日3杯、2週目は1日2杯と、段階を踏むと離脱症状を防げるそうです。
外傷の治りや精神にも影響あり
私たちの体は外傷を受けると、新陳代謝を活発にして細胞が増殖、傷を塞ごうとします。しかしカフェインを摂取していると、治癒活動が抑制され、治りが遅くなります。
また、カルシウムの排出を促す働きもあるため、骨折の治りが遅くなる、骨粗鬆症の原因になると報告されています。ケガを早く治したいときは、ノンカフェインがお勧めです。
最近、遺伝子によってカフェインでスッキリ爽快になるか、逆に不安になるかが決まるということがわかってきました。
その結果、日本人の4人に1人はカフェインを150㎎摂るだけで不安な気持ちになるそうです。コーヒーよりも煎茶やほうじ茶ほどのカフェイン量が体に合っているのかもしれませんね。
いつわりの元気に騙されない
カフェインの過剰摂取がもたらす元気というのは、「元気の前借り」に過ぎません。
摂ることで一時的に活力がみなぎっても、必ずその反動で2倍、3倍の疲れを体験します。
カフェインを含むコーヒーやお茶にはメリットがたくさんあり、私たちが日頃飲んでいる量で過剰摂取になることは考えにくいでしょう。
しかし、どのような成分も摂りすぎたら危険が伴います。
いつわりの元気に騙されている姪には、ちょっとマンスプばりにカフェインの危険性(摂りすぎるとこんなダメな大人になる)を伝え、まだ、大人の階段を登らないよう説得しました。
健康管理士の松渓(マッケイ)と申します! 若い頃はスキー三昧の日々を送っていましたが大ケガをして引退。そこから健康のありがたみに目覚めました。皆さまの日々の暮らしに「ちょっと役立つ」情報を随時発信していきますので、参考にしていただければ幸いです。
残念ながら、25年ほど健康関連の業界に身をおく私からすると、世にあふれる健康情報の中には「?」と首をかしげたくなる内容も。そのため、つい辛辣な言葉もでてしまうことがあると思いますが、どうかご容赦くださいませ。