コラム

食品の「成分」に惑わされないで

リコピンや糖分といった『成分』と、肉や野菜といった丸ごとの『食品』という2つの考え方があります。

前者は「古い考え方」で、食品に含まれる「ある成分」が体に良いのだと決めつけ研究されていた時代のものですが、最近の研究では、重要なのは食品の「成分」ではなく「食品そのもの」である、という考え方に変わってきました。

欧米では、「リコピンが」、「βカロテンが」、などという会話は出ないそうです。

とはいえ、まだまだ成分を前面に押し出した方が販売しやすい日本では、テレビも企業も「成分」にスポットを当てています。悲しいかな、時代遅れといえます。

これは、食品の栄養を成分と捉える考え方で、「栄養至上主義」(ニュートリショニズム)と呼ばれる「成分信仰」です。たしかにこれでは、生鮮食品でも加工食品でも、価値は同じになってしまいます。

健康に悪いと考えられる食品は、①赤い肉(牛肉や豚肉のこと。鶏肉は含まない。ハムやソーセージなどの加工肉は特に体に悪い)②白い炭水化物 ③バターなどの飽和脂肪酸の3つであるとされています。

逆に、脳卒中、心筋梗塞、がんなどのリスクを下げる、健康に良いと考えられる食品は、①魚 ②野菜と果物(市販の野菜ジュースやフルーツジュース、ジャガイモは除く) ③茶色い炭水化物 ④オリーブオイル ⑤ナッツ類の5つである、となっています。

※オリーブオイルについては、炒め物には良いですが、くれぐれもスプーンなどで飲まないでくださいね。別の機会に覚書でお話しします。

たとえば果物。市販のフルーツ100%ジュースを多く飲んでいる人は、糖尿病と肥満のリスクは高まり、果物の摂取量が多い人ほど、そのリスクは低いのです。

とくに皮ごと食べるブルーベリー、ブドウ、リンゴを食べている人はリスクが低いという結果が出ています。

果皮には、果肉よりファイトケミカルや食物繊維が多く含まれています。白米と玄米、「白い炭水化物」と「茶色い炭水化物」の関係と同じですね。

数多くの行動科学研究から、太らないため、痩せるため、健康になるために食事の量を減らすと、リバウンドや、ストレスによる過食につながり、逆に健康を害することが明らかになっています。

炭水化物には、「痩せる炭水化物」と「太る炭水化物」があります。アメリカでもハーバード公衆衛生大学院の研究者らは、何カロリー摂取するかではなく、カロリーをどのような食品で摂るかが重要だと警鐘を鳴らしています。

お魚と乳製品

良い食品の①番に取り上げられた魚は、心筋梗塞や乳がんのリスクと死亡率を下げることが分かっています。

魚を全く食べない人と比べると、死亡率が12%低いのです。具体的には、85~170gの魚を毎日摂取すると、ほとんど食べない人と比べ、心筋梗塞で死亡するリスクは36%も低下したそうです。

では、魚を食べれば食べるほど健康になれるでしょうか。さすがにそういうわけではありません。別の調査によると、1日に60g食べていれば、それ以上食べても変わらないそうです。イワシやアジ、サバ、サンマや太刀魚など、一尾を日替わりで食べていれば優等生です!

魚の摂取は、大腸がんや肺がんのリスクも下げます。また、前立腺がんになるリスクは下げないものの、発症後を比べると、生存率を押し上げることもわかっています。

乳製品 牛乳とヨーグルト

この業界も政治やマスコミへのロビー活動が活発なため、アメリカでも日本でも、農務省が推奨する量は歪められています。

日本の農林水産省による牛乳の推奨量は、「アメリカ農務省の発表を基にした」と言い訳をしています。というのは、アメリカ農務省の数値は推奨ではなく、上限値であるとアメリカでも問題になっているからです。

前立腺がんと乳製品との関係はよく知られています。1日に牛乳200ml増えるごとに3%、低脂肪乳では6%、チーズは50gごとに9%と前立腺がんのリスクが上昇することが分かっています。

卵巣がんとの関係は、前立腺がんほどではないといわれますが、牛乳を1日1杯多く飲むごとに、リスクは13%上昇するという研究もあるので要注意です。

ただ、未成年者にとっては貴重なたんぱく源になるので、乳製品をほどほどにするのは、大人になってからでもよいと考えています。

牛乳がアトピーや喘息に良くないと言われているのは、牛乳にあるカゼインというタンパク質が原因です。

ところが、「乳製品と喘息」と題して、「バランスの取れた食事は喘息を患うすべての患者に推奨されています。パン、シリアル、果物および野菜、赤身肉または肉代替食品、飲用乳、チーズおよびヨーグルトのような乳製品など多彩な食べ物を食事に摂り入れることです。牛乳を毎日3度以上飲用した児童は、牛乳の飲用がもっとも少ない児童に比べて2.5倍も喘息の発作が少なかった」との研究が紹介されていました。

どこかというと、「国際酪農連盟日本国内委員会」のホームページです。

さすがにそれを発見した時は、あっけにとられました。イギリスでは2006年、アメリカでは2011年から小学校の給食で、牛乳の提供は禁止されています。

 

食品中の「ある成分」に気を取られ、本当に栄養のある食品を摂取し損なっては元の木阿弥、本末転倒です。

正しい情報を見極めて、健康的な「食の選択」をしていきたいですね。

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