長く続くコロナ禍の影響で自宅に解熱鎮痛剤や総合感冒薬など、いくつもの薬を常備する人が多くなりました。 クスリは逆から読むとリスク(危険)。その読み名の通り、薬は毒にもなりえるのです。
その1. 複数の薬の飲み合わせに注意!
その2. 気をつけるべき薬の相互作用
その3. 漢方薬やハーブにも要注意
− 後編 −
その4. 「薬と食」の悪い食べ合わせ
その5. 薬の相互作用から自分を守る
複数の薬の飲み合わせに注意!
危険な薬の飲み方で最もありがちなのが、複数の薬の飲み合わせです。病院で風邪薬をもらい服用している最中に咳が出るからと、追加で市販の咳止め薬を飲んだ経験はありませんか?
また総合病院の内科とは別に町の整形外科にかかって、同じような薬を処方されることもあります。
このような場合いくつかの薬の成分が過剰になり、予想外に強く働いたり逆に効き目が悪くなることもあります。これを薬の相互作用といいます。
気をつけるべき薬の相互作用
①類似成分の過剰作用
作用が似ている成分を一緒に服用すると、効果が強く出て体調を崩したり、内臓を傷めたりする場合があるので要注意です。例えば鎮痛解熱剤や咳止め、睡眠導入剤には似た成分が含まれています。同時に摂ることで意識障害や内臓に負担をかけることがわかっています。
②成分の分解妨害作用
内服薬は胃や小腸で溶けて吸収され、血流にのって肝臓に届き分解されます。その後、心臓を経て全身に運ばれ、特定の器官や組織に作用して効き目を発揮します。ところが肝臓で分解されるべきAという薬の成分が、Bという薬の成分に邪魔されて分解されないと、薬の成分がたまってしまい肝臓に影響が出ることがあります。
③相反する働きの作用
反対の作用を持つ成分を同時に服用すると、互いの効果を打ち消してしまい本来の治療効果が得られません。
例えばスクラート(複合制酸剤)などの胃酸中和薬と、抗生物質のクラビット(ニューキノロン系)を一緒に服用すると、抗生物質の効果が低下することが分かっています。このような相互作用は、①で解説した「類似成分の過剰作用」ほど緊急的な副作用とはなりにくいものの、薬剤の効果が得られず、病気が悪化してしまう危険もあがります。
漢方薬やハーブにも要注意
比較的作用が穏やかと考えられている漢方薬やハーブ、さらにはサプリメントやビタミン剤でも相互作用は起こります。
【ケース1 】便秘薬
医薬品の中で作用が穏やかと考えられている漢方薬ですが、強い成分もたくさんあるのです。
例えば下剤をはじめ、さまざまな漢方薬に使用される大黄という生薬には、センノシドという成分が含まれています。この成分は市販の便秘薬や、ダイエットを謳った健康茶にも含まれているので注意が必要です。多量に摂ると酷い下痢を起こすばかりか、妊婦では子宮収縮を誘発し流早産の原因に。授乳婦の場合、母乳を介して乳児がセンノシドを摂取し下痢を引き起こした例もあるのです。
【ケース2】 風邪薬
葛根湯などに含まれる麻黄にも注意が必要です。この成分は市販の風邪薬や咳止め薬に含まれているエフェドリンと同じで、軽い覚醒作用があります。 その働きで風邪の諸症状が楽になるのですが、例えば葛根湯を服用中に咳が気になり咳止め薬を一緒に服用すると、エフェドリンの血中濃度が高くなってしまい動悸や息切れ、さらには狭心症や心筋梗塞を起こす危険性もあるのです。
【ケース3】 ハーブティー
心をリラックスさせるハーブとして人気のカモミール。お茶やサプリメントで販売されています。このハーブは血管を拡張させることで鎮静効果を発揮しますが、血栓を防ぐワーファリンと一緒に服用すると、血液が固まりにくくなって、出血しやすくなります。
【ケース4】 野菜
甲状腺のお薬に影響を与えるものというと、海藻類が注目されますが、じつは家庭の常備野菜の中にも注意が必要なものがあります。
キャベツなどのアブラナ科の野菜には、チオオキサゾリジンという成分が含まれており、多量に食べるとヨウ素の吸収を抑えてしまいます。またアブラナ科に含まれるインドール系化合物は、がん予防効果があると注目される一方、カロナールなどのアセトアミノフェン系の鎮痛薬の働きを弱めてしまいます。
ほかにも血圧の薬とグレープフルーツ、風邪薬とコーヒー、抗生物質とチーズなどの乳製品といった食べ合わせは、相互作用を起こす恐れも。薬が処方されたときは薬剤師に食べ物との関連についても聞いてみましょう。
後編 「今日から実践できる!薬の正しい飲み方」では、薬と食の悪い食べ合わせや、正しい薬の飲み方をお知らせいたします。
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