欧米では成人の失明原因の第1位の病気「黄斑変性」。日本では比較的少ないといわれていましたが、人口の高齢化と生活の欧米化により、失明原因の第4位と年々患者が増加しています。近年まで治療法がないとされていましたが、最近いくつかの治療法が新たに開発され、多くの患者の視力の維持や改善が得られるようになりました。
前編では黄斑変性の症状について紐解きました。後編は目の異常を放置しないための対策方法をお知らせいたします。
《目次》–後編−
6.黄斑変性の検査
7.治療法
8.予防・改善のために必要なこと
前編「急増する眼病 黄斑変性」はこちら
1.黄斑変性とは
2.黄斑変性の症状
3.目の状態をチェックしてみよう
4.黄斑変性のタイプ
5.なぜ新生血管が目の障害に?
黄斑変性の検査
目の検査をする際、必ず行われるのが問診です。質問に対して答えられるようにメモをとっておくのがおすすめです。
«問診票»
1 | どのような症状か? |
2 | いつ頃から始まったか? |
3 | 今までにかかったことのある病気(全身、眼) |
4 | 家族、兄弟で同じような病気の人がいる |
5 | 喫煙歴・飲酒量 |
6 | 治療中の病気 |
7 | 服用中の薬(お薬手帳に管理していると便利です) |
【視力検査】
視力表などを使って測定します。
【眼底検査】
目の奥にある網膜を調べるために、点眼薬で瞳孔を開かせて行う場合もあります。検眼鏡を使用して直接眼底を観察する方法と、写真に記録する方法があります。
【細隙灯顕微鏡検査】(さいげきとうけんびきょう)
暗室で行われる検査。下の画像のような機械を使用し眼底に細く強い光を当て拡大して観察します。滲出型黄斑変性では、出血や網膜のむくみなどの異常が判ります。
【蛍光眼底造影検査】
造影剤を入れ、眼底カメラで新生血管や新生血管から漏れた血液がどこに存在するのかを調べます。
【網膜断層検査】
光干渉断層計という機器を使い網膜の断面を調べます。網膜のむくみや新生血管などが観察できます。
黄斑変性の治療法
滲出型黄斑変性には、次の3つがあります。
①抗血管新生療法
黄斑変性の原因となる新生血管は、VEGFというたんぱく質によって悪化していきます。近年この働きを阻害する薬剤が開発されました。
目に直接薬を注射して新生血管の増殖や成長を抑制します。外来でできる治療ですが、目はデリケートな臓器のため手術同様に消毒し注射前に麻酔をします。麻酔が効いてから治療しますので痛みはありません。
症状により治療間隔は異なりますが、最初は月に3回、その後は目の状況で回数を決めます。②光線力学的療法
抗血管新生療法と併用される治療法。光に反応する薬剤を腕の静脈から注射後、病変部に弱いレーザーを照射して新生血管を閉じます。使用する薬剤は、新生血管に集まる習性があり、正常な組織に大きなダメージを与えることなく治療ができます。
ただし薬の性質上、治療後48時間は日光など強い光に当たれませんので2〜3日の入院が必要です。 退院後も5日間は直射日光を避ける必要があります。
③レーザー光凝固術
新生血管をレーザーで焼き固める治療法。新生血管が黄斑部の中心にない場合の治療法ですが、周囲の視細胞などにダメージが及ぶため、全ての患者さんに行える方法ではありません。
予防・改善に必要なこと
黄斑変性と診断された場合、萎縮型には治療薬(開発中)がないため、進行を止めるには緑黄色野菜の摂取および禁煙を心がけましょう。
【禁煙】
タバコは黄斑変性の最大の危険因子。喫煙歴が長く本数が多い人ほど高リスクで発症率は非喫煙者の4~5倍に跳ね上ります。
【紫外線予防】
紫外線は全ての眼病の原因になります。黒目が(瞳孔)大きく開かないようにレンズが大きく色の薄いサングラスで保護しましょう。
【食事のバランス】
活性酸素の害悪を軽減するために多種多彩な抗酸化成分を摂取しましょう。旬の野菜や果物、亜鉛を含む牡蠣などの魚介類も体内の抗酸化酵素の働きを助けるのでおすすめです。
黄斑変性は治療や予防が可能な病気に変わりつつあります。予防や治療を積極的に行い、老後の生活の改善につなげましょう。
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