前回、免疫力を高めるのにおすすめの発酵食を紹介しました。
そこで今回は、もっとも重要な『腸』に関してお話しいたします。
腸内を司る3つの細菌グループ
免疫力を高める食事を「鍵」とするならば、それらを吸収する腸は「扉」の役割を果たします。
体内の腸内細菌は大きく分けて善玉菌、悪玉菌、環境によって変わる中間の日和見菌の3グループです。これらの菌は互いに密接な関係を持ち、複雑にバランスをとっています。菌の割合は年齢によって異なるとされていますが、菌の種類は一生を通じてほとんど変わらないと言われているのです。
抗生物質の服用や食中毒で腸内細菌は大きく変動しますが、時間の経過とともに元に戻るとの報告も。
では自己免疫力の向上に、腸内細菌のバランスがどのように影響するのでしょうか。まずは3つの菌の役割についてみていきましょう。
減ってしまった善玉菌を取りもどす方法
腸内細菌のなかで、一番数が多いのは中間の日和見菌、次いで善玉菌、悪玉菌は少数です。
先述のとおり、腸内の細菌は年齢とともに変化します。歳をかさねると悪玉菌の割合が増えてくるのです。
母体内で胎児は無菌に保たれています。生まれてから初めて口にする母乳には乳糖やオリゴ糖を栄養源として、ビフィズス菌が繁殖しはじめます。赤ちゃんの便が黄色で臭いがないのは、ビフィズス菌優勢の腸内環境だからです。
高齢になると善玉菌などは減少し、悪玉菌が増えていきます。
悪玉菌の増殖は腸内の腐敗を促進、便秘や下痢などの便通異常、免疫力の低下に繋がります。
多種多様な食材をとっても、劣悪な腸内環境は吸収の妨げになるのです。
では、減ってしまった善玉菌はどのようにして増やせばいいでしょうか。
簡単な方法が2つあります。
ひとつ目は、健康に有用な作用をもたらす生きた善玉菌である『プロバイオティクス』を直接摂取する方法です。
ふたつ目は、町内にもともと存在する善玉菌を増やす『プレバイオティクス』を摂取する方法。
ここまで読んでいただいたところで、悪玉菌には悪いイメージがついたかと思います。しかし、その働きはわたし達の体には必要不可欠な存在です。肉類などのタンパク質を分解し、便として排出処理をするのに欠かせません。3つの菌類がバランスよく働くことが、自己免疫力を高めるのにもっとも重要となるのです。
『潤腸通便』作用で便秘がち、下しがちな方に有効!
リンゴとさつまいものはちみつレモン煮
【材料】
りんご 1/4個
さつまいも 1/2本
はちみつ 小さじ1
レモン汁 大さじ2
塩 少々
【つくり方】
①りんごはいちょう切りに、さつまいもは厚さ1cmの輪切りにします。
②鍋にりんごとさつまいも、ひたひたの水とはちみつ、レモン汁、塩を入れて火にかけ、沸騰したら弱火にして、①を入れてやわらかくなるまで煮れば完成。
りんごとはちみつは腸の動きを整えて、便通をなめらかにする『潤腸通便』作用がある食材で、便秘にも下痢にも効果的。酸味と甘味は互いにバランスをとり合う理想的な組み合わせです。栄養は腸から吸収されます。腸のバランスを整えて、とりいれた栄養をしっかりと全身へ送れる体づくりを心がけましょう。
「東京薬膳研究所」代表。本場中国で薬膳を学び、帰国後は日本の気候風土に合った薬膳理論を研究。和食薬膳・食養研究の第一人者である。『食は薬なり』を全国へ広めるため、執筆活動のかたわら各地で講演を行い活躍中。著書に『決定版 和の薬膳食材手帖』『旬を食べる和食薬膳のすすめ』(すべて家の光協会)などがある。