コラム

季節の変わり目です!その抗生物質、本当に必要ですか?

「とりあえず、抗生物質も一緒に出しておきますね」


風邪なのに、お医者さんにそういわれた経験はありませんか?また、いつの間にか抗生物質が処方されていたり…
「抗生物質を飲んだら風邪が楽になった」と信じている人もいます。しかし、それは単に『風邪が自然と良くなる病気』だから回復したのであって、抗生物質が効いたわけではありません。

抗生物質と細菌・ウイルス

抗生物質は、細胞を破壊することで菌の増殖を抑えます。
①細菌には、細胞があるため抗生物質が効きます。
②ウイルスは菌ではありません。つまり細胞がないので 抗生物質は効きません。風邪はウイルス感染なので、抗生物質は効かないのです。

「見よう見まね」と「とりあえず」

お医者さんはなぜ風邪なのに抗生物質を処方するのでしょう?
国立国際医療研究センターによると、医師が抗生物質の使い方を学ぶ機会がなく、先輩医師の処方を見よう見まねで学び、結果として惰性で抗生物質を出し続けている場合があります。
もう一つは一見、風邪のように見えるんだけど、肺炎など、もしかしたら菌の感染症の疑いがあるかも…と、自分の診断に自信がない場合に「とりあえず抗生物質」を処方する場合があるようです。

抗生物質が効かない「耐性菌」

抗生物質とは、細菌から抽出した薬剤です。細菌は自分の縄張りを広げるため、他の細菌を殺す毒素を作り出します。この毒素を細菌から取りだし、薬にしたものが抗生物質。新たに開発されるたび、多くの菌に効くよう改良されてきました。
幅広い菌に効く抗生物質が良いように感じますが、実はそんな単純なものではありません。細菌はその抽出物に負けまいと、ものすごいスピードで進化し、抗生物質が効かない「耐性菌」が生まれます。
よく処方されるメイアクト、フロモックス、バナン、セフゾン(セフジニル)、トミロンといった抗生物質(いわゆるDU処方:お薬手帳があったらご確認ください)は、幅広い菌に対して抗菌作用があるため「どの菌が原因か解らない」というときに処方されます。
この便利さが風邪のときにも「とりあえず抗生物質」と処方されてしまうのです。
繰り返します。風邪のウイルスには抗生物質は効きません。抗生物質の服用を重ねるということは、数多くの菌を耐性化させるだけです。

治療できない耐性菌の出現

厄介なのは、細菌同士が薬剤の対処法を伝達する手段をもっている点です。つまりA菌が抗生物質に耐性を持つと、その情報がすぐに別のB菌にも伝わり、B菌も耐性化してしまうのです。

1つの薬剤にだけ耐性があるのでしたら、他の薬で治療ができますが、最終的には「どの抗生物質も効かない多剤耐性菌」が生まれ、大変なことになります。
この耐性化を少しでも遅らせるには、抗生物質を「必要な時のみ」「必要な期間のみ」「必要な作用のみ」で使うことがとても重要です。
ちなみに幅広い菌の繁殖防止に使われる食品防腐剤も、耐性菌の出現に関係あるとの指摘がされています。
やはり不要な物は取らないに越したことはありませんね。

貴方のお医者さんは抗生物質を出しますか?

最近では抗生物質を出したがらないお医者さんも増えてきました。
理由①
細菌感染以外に効果がないと医師の間で認知されてきた。
理由②
ストップDU処方(消化管からの吸収が悪く、DAITAI(だいたい) UNKO(うんこ)になる)という、抗生物質乱用に対する啓蒙活動の影響。
理由③
耐性菌の増加。例えば胃がんなどの原因となるヘリコバクター・ピロリ菌も耐性化し、除菌成功率が低下しています。
理由④
副作用。肝機能、腎機能障害をはじめ、皮膚粘膜眼症候群という失明や死亡する病気を起こすことがある。
理由⑤
腸内細菌のバランスを崩してしまう。抗生物質は腸内の善玉菌も殺菌してしまうので、免疫力の低下のみならず、感染性の腸炎や潰瘍性大腸炎を誘発することがある。
理由⑥
指定病気以外への処方は違法。風邪では抗生物質を出せません。
もし処方する場合は「気管支炎」など抗生物質に適した、つまり細菌が原因の病名に変更しなければならないのです。

私たちも、処方される薬に関心を持ち、医師や薬剤師に「何のために出された薬なのか(これって、もしかして!だいたいウンコになる抗生物質ですか?)」と質問してみましょう。
皆さんが意識すれば、安易に抗生物質を出すお医者さんの習慣も変わるかもしれません。

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