前回、普段あまりなじみのない「リンパ」の基本的なしくみについて解説いたしました。
今回は、リンパの流れを良くして健康を実現する方法をお伝えいたします。
リンパの流れをよくするには
どうしたらいいの?
「老廃物」 が溜まると、むくみや肥満をはじめとして、私たちの健康を損なう恐れがあります。
日頃から毒素を溜め込まないためにも、老廃物が溜まりやすいポイントを押さえ、体外に排出するようにしていきましょう。
溜まりやすいポイントとしては、リンパ節と内臓、足裏が挙げられます。
老廃物を取り除き、リンパの流れを良くするには以下の方法がよいでしょう。
・ウォーキングや水泳などで体を動かす
・利尿作用のある飲み物を控える
・水分を補給する
・体を温める
・リラックスする時間を持つ
・リンパマッサージを自分でする
・プロのリンパマッサージを受ける
からだの声なき声を聞く
足のリンパは、下から上へという流れになります。
立ち仕事を続けていると重力がかかるので、リンパがからだ全体に流れづらくなってきます。
重力の働きでどうしても上から下への力がかかりますので、とくに夕方になると足の組織間隙に流れなかった水が溜まってきます。これを「足がむくんでいる」と」感じるのです。夕方になると靴が窮屈に感じられるのはこのためです。
十分によく寝た朝、足のむくみは健康な人なら消えているはずです。
夕方の足のむくみは、「横になったほうが良いですよ」「足踏みしたほうが良いですよ」と、自分のからだが警報を鳴らしてくれているのです。
からだは、内部で起こっている変化を私たちに教えてくれるもの。からだのこういった声なき声を聞きとることが、健康のために大切な心構えになるのです。
リンパは夜流れる
からだの中で一番たくさんのリンパが作られている臓器は小腸。
からだを横にしているとき、外側にリンパを押し出そうとする圧力が高まります。つまり、寝ているときには腸からのリンパがたくさん流れるのです。
腹式呼吸で腹圧が加わればさらによく流れます。「リンパは夜流れる」と言われるゆえんはここにあります。
生まれて間もない赤ちゃんは、ふっくらとした皮膚に覆われたからだをしていて、お母さんの母乳を飲んで、よく寝ていますね。それだけで、ほとんど病気になりません。それは、腸のリンパと母乳と深い腹式呼吸があってこそのものです。
江戸時代から続く健康法とは?!
江戸時代に書かれた『養生訓』には、誰にでもできる健康維持法として十分な量の水分を摂ることが書かれています。
その書物には、経験則からうまれた庶民のできる健康法が記載されています。その心を読み解いてみると、「朝起きたらお茶一杯に梅干し一個、ごはんのたびに茶碗の米粒洗うが如く、お茶一杯」にまとめられると思います。1日に1~1.5リットルの水分補給が健康維持につながると解釈できるのです。
その理由を科学的に解き明かす術は江戸時代当時にはなかったものの、水分補給の重要性については、口伝えで庶民の間に受け継がれてきた健康法といえるでしょう。
抵抗力を高める自然免疫細胞が小腸の壁に住んでいる
最近になって、水を飲むことで自然免疫力が高まることが関係することがわかってきました。そのカギとなるのが、腸の壁にたくさん住んでいる「自然免疫細胞」です。
飲んだ水は腸のリンパにたくさん流れてきて、腸の壁に住んでいる自然免疫細胞が刺激されます。その結果、免疫力を高めるサイトカインという物質が産出され、これが全身に運び出されることにより、健康につながるのです。
このことは、水分を毎日続けて飲んでいると健康につながるという日本の伝統的な健康法が、科学的にも正しいことを表しています。『養生訓』の教えが医学的に証明されたわけですね。
おすすめの水分は、水・白湯・お茶(カフェインの入っていないもの)。
特に温かいものは、体を温めることでさらにリンパの流れが良くなります。
なお、コーヒー・緑茶・ウーロン茶・紅茶などに入っているカフェインは、交感神経を刺激して毛細血管を縮めてしまい、血液やリンパの流れを滞らせるため、注意が必要です。
神秘の臓器をいたわり全身の健康へ
リンパを正しく流し、健康につなげるためにはどうしたらよいか、最後に基本事項を三点だけおさえていきましょう。
第一に十分な睡眠を取ることです。
太陽の光を浴びて深い眠りを作ることが重要です。
第二に一日に最低でも1.5リットルの水分を取ることです。
食べ物にも水分は含まれますし、食事以外に酵素などを飲む習慣があれば意外にも簡単に達成可能です。
第三に足をよく上げて歩くことです。
もしも泳げるならば、プールで週に1回でも浮いているのも最高です。平泳ぎなどを加えられればさらに効果的。
リンパの流れをよくするには、寝なくてもからだを横にして重力を外すことがポイントです。さらに、腹式呼吸と足の運動でたくさんのリンパが流れます。
これらを継続できれば健康につながることは間違いありません。
ただ、継続することが難しいので、途中でやめないために夫婦や友人同士など、2人以上で取り組んでみてはいかがでしょうか。
「リンパと一言で言うことなかれ」といわれていますが、リンパの研究はまだまだ奥が深いとわかっていただけたでしょうか。
皆さまも「神秘の臓器」をいたわることで全身の健康につなげ、こころ豊かな人生をお送りいただくことに利用してもらえれば幸いです。