私たち人類は健康であるために、除菌や殺菌、ワクチンなどで病原菌を遠ざけようとしてきました。
しかし、人類がどんな手を打っても、新型ウイルスの蔓延や現代病ともいえる心身の病気、飢餓などにおびやかされ続けています。
人は自分一人だけで健康を維持することは難しく、環境変化の影響を免れることはできません。
今回は、人類の健康と地球環境の結びつきに焦点を当てた「プラネタリーヘルス」について考えていきましょう。
地球と人類の不調を招いている「土」の破壊
「土」は人類だけでなく地球上の生き物すべてを支え、生態系を作り上げてきました。
しかし、人類はコンクリートで地上を塗り固め、土に棲みつく微生物を農薬などで侵害。健康な土を殺しています。
地質学的には「人類が地上の土に隕石の衝突と同レベルのダメージを与えた時代(人新世)」と言わているほど。土が破壊されたことによる地球の不調と人類の病が、現在、表に出てきているのです。
人は腸の中に「土」を持っている
良い土には、豊富な栄養を作り出す数多くの微生物が棲み付いています。植物たちが根から栄養を吸収できるのは、これらの微生物たちのおかげです。
微生物が多く棲み活動している土はフカフカし、適度な水分を含み通気性があります。つまり、植物がしっかりと根を張れる土です。一方、微生物が活動していない土は固くて保水性が悪く、水はけも悪くなり濡れるとヌルヌルになってしまいます。
人間の腸にも、土と同様に数多くの微生物が棲む「腸内フローラ(腸内細菌叢)」があります。そもそも腸内細菌の由来は、私たちの祖先が食べた食物についてきた土に棲む「土壌菌」。腸内の微生物が作り出した栄養を「腸壁」という根から吸収しているのが私たちです。
多種多様な腸内細菌がバランスよく働いている人の便はほどよく水分と空気を含みますが、腸内細菌のバランスが崩れるとカチカチだったり、ベチャベチャになってしまいます。
人間も地球も「土壌改良」が急務
農薬や化学肥料を大量に使った代償として起こっていることは、環境汚染や生態系の変化、砂漠化、気候変動などの環境問題ばかりではありません。人の腸にいる微生物たちも脅かし、私たち自身の健康への脅威にもなっているのです。
農薬や化学肥料によって土に棲んでいる微生物たちはダメージを受け、作物に付着した農薬や加工食品に使用される添加物により、腸内細菌の種類も減少しています。
私たちの中にある土つまり腸内フローラを整えるのと同時に地球の土を回復するために、微生物の力を見直していくことが大切です。
「食」でつながる人と地球
人のみならず地球上の生き物は全て、食べることで地球や他の生物とつながっています。そこで、人と地球を元気にするために提案されているのが「プラネタリーヘルスダイエット」という食事方法です。
今まで、健康的な食事法というのは「人間の健康」を実現するためだけのものでした。しかし、人も地球の一部。地球にやさしい食事が私たち人間に健康をもたらすなら、そのメリットは一石二鳥どころではありません。
プラネタリーヘルスダイエットでは、地球上の生き物の多様性を回復するために、地球上にいる何千種・何百万種もの品種の動植物を食料として取り入れることを提案しています。
しかし、急に「道端の草を食べましょう」と言われても難しいのが現実です。自分たちのできるところから一歩を踏み出してみましょう。
まずは、地元で獲れた食べ物を食べるだけでも、輸送で排出される二酸化炭素を削減できます。主食をパンから雑穀米に変えるだけでも、農薬の減少につなげられるでしょう。
プラネタリーヘルスにぴったり!日本の伝統食を食べよう
「まごはやさしい」と言われる日本で昔から食べられてきた伝統的な和食は、腸内の土壌改良とプラネタリーヘルスに最適です。なかでも豆類や海藻類、きのこ、イモ類は腸内細菌を元気にする水溶性食物繊維がたっぷり!おなかの環境も整えてくれます。
毎朝トーストとハムエッグを食べていたなら、週に3回は納豆と雑穀ごはんに変えてみるということだけでも大きな前進です。
まごはやさしい
【ま】……豆類
【ご】……ごまなどの種子・ナッツ類
【は(わ)】……わかめなどの海藻類
【や】……野菜
【さ】……さかな
【し】……しいたけなどのキノコ類
【い】……イモ類
和食だけでなく、これらの食材を使ってさまざまな国の料理にアレンジすれば、食事の楽しみにもつながります。毎日が難しいなら、週に1度、月に1度でも、自分と地球の健康のために取り入れてみてはいかがでしょうか。
こんにちは、健康管理士・腸内環境管理士の中谷です。三姉妹の母で、毎日にぎやかに過ごしています。楽しみは美味しいお酒と観葉植物を育てること。美酒を作る発酵の力と、植物が持つ癒しのパワーを日々実感中です。植物で大切なのは根っこですが、人間にとっての根っこは腸。腸にまつわるお話や、健やかに過ごすヒントなどをお届けします。ぜひ、ご一読いただければ幸いです。