最近は朝夕と日中の気温差が大きく、空気の乾燥も著しくなりましたね。
東洋医学では各季節の気候的な特徴が身体に影響し、季節特有の症状を引き起こす原因になると考えています。
冷たくて乾いた空気は、鼻から喉、気管、肺へと送り込まれ、粘膜が乾燥してカサカサになり、咳や痰など、気管支や肺のトラブルが起こりやすくなります。
肌も潤いがなくなり頭皮や髪がパサつくなど、秋特有の症状が現れる人が、これからの季節は増えそうです。
伝染性の疾患を招く細菌やウイルスは、乾いた環境を好むため、呼吸器の粘膜が乾くとウイルスなどが繁殖しやすくなります。インフルエンザや秋風邪が流行る一因となっているので、注意が必要ですね。
五行説でみる秋とは
五行説に従えば、秋は肺や大腸、皮膚にもっとも負担のかかる季節とされています。
乾燥した空気が気管支や肺などの呼吸器系や皮膚に影響するのは容易に想像できますが、肺と表裏一体といわれる大腸にもトラブルが起こりやすいです。
秋に生じやすい様々な症状を緩和する働きをもつのが、大根やレンコンなどの根菜類、ニンニクや生姜といった薬味です。
辛味の主な効能
①肺・大腸・皮膚の働きを補う
②気・血・水の滞りやストレスを発散する
③細菌・病原菌に対する殺菌・解毒作用
④腎臓・膀胱に活力をつける
⑤脾胃の働きを助けて消化をよくする
⑥身体を温め、血液循環をよくする
免疫力を高める意味でも、腸内環境を整えてくれる辛味の食材は、この季節に欠かせない食材。
また秋に旬を迎える食べものは、肺を潤して腸をなめらかにし、肌や毛髪を艶やかにするものや、胃の働きを助けて消化をよくするなどの働きをもったものがほとんどです。
秋の食養粥レシピ3選
にんにく粥
①水800mlを注いだ鍋を強火にかけ、沸いてきたら皮を剥いたにんにく6片を入れて約1分間煮てにんにくを取り出す。
②鍋に洗ったお米100gを入れ、軟らかくなるまで煮込む。
③にんにくを戻して5~7分間さらに煮込み、最後に塩適宜で味をととのえる。
にんにく(辛・温) 肺・胃・大腸
特有の香りを持つアリシンは、ビタミンB1と結合すると体内に吸収されにくく、分解されにくいアリチアミンになり、疲労回復効果を発揮。
殺菌、防カビ作用、解毒作用、胃腸を温める作用などがあり、冷えによる腹痛、下痢、食中毒、風邪による咳の改善に効果がある。
ヨーロッパでは、動脈硬化、高血圧、伝染性胃腸炎などの予防や改善に用いられる。
また、香辛料として肉類などの臭み消しに利用される。
れんこん粥
①れんこん250gは皮をむいて薄切りにする。
②鍋に水800mlを注いで強火にかけ、洗ったお米100gと①のれんこんを入れる。
③煮立ってきたら火を弱め、お米が軟らかくなるまで煮込み、砂糖大さじ1で味をつけて器に盛る。
れんこん(甘・平)心・脾・胃・肺
胃腸の消化吸収機能を強化して、下痢などを抑え、熱を冷ます。
口の渇きを癒す。
血液循環を円滑にすることで、精神を安定させ、アルコールなどによる中毒症状を改善する。
生姜粥
①生姜6〜9gはきれいに洗って皮ごとみじん切りにし、お米100gとなつめ2〜3個はサッと洗っておく。
②鍋にお米、生姜、なつめ、水800mlを入れて最初は強火。煮立ってきたら火を弱めて軟らかくなるまで煮る。
③最後に塩適宜で味をととのえる。
生姜(辛・温)
生姜は体を温めるのと同時に、風邪による発汗、寒気、頭痛、鼻づまり、咳や痰、喘息、吐き気などの症状を癒す。
また、爽やかな香りが魚肉の臭みを消し、きのこ類の中毒症状の改善にも効果を発揮する。
「東京薬膳研究所」代表。本場中国で薬膳を学び、帰国後は日本の気候風土に合った薬膳理論を研究。和食薬膳・食養研究の第一人者である。『食は薬なり』を全国へ広めるため、執筆活動のかたわら各地で講演を行い活躍中。著書に『決定版 和の薬膳食材手帖』『旬を食べる和食薬膳のすすめ』(すべて家の光協会)などがある。