コラム

一日一個のりんごは医者知らず

いつまでも若々しく長生きしたい…。
そんな願望を満たすため、中国・泰の始皇帝は徐福という男性に命じて、東の海に浮かぶ仙人が住む島「蓬莱山(ほうらいさん)」に行き、不老不死の薬を貰ってくるか、咸陽(かんよう:西安)に仙人を連れてくるように命じたという話が「史記」に載っています。

手ぶらで戻ったら始皇帝に殺されると思った徐福は、当地で広い平野と湿地を得て王となり、咸陽に戻らなかったそうです。
この徐福がたどり着いたのは日本だという説もあります。

一方、玄宗皇帝に愛された世界三大美女のひとり、楊貴妃の「美」の秘訣は、ザクロ・ライチ・白キクラゲ・鶏手羽元などのコラーゲンたっぷりの食べ物を食していたからとされています。

中国の食に対する欲の歴史は、古代から培われてきたようです。

目次

医食同源の食養生

医食同源という言葉は、日常の食事も病気を治療するのも、ともに生命を養い健康を保つために欠くことができないもので、その源は同じという意味があります。

薬膳発祥の地である中国においての食事療法の歴史は、古代の周王朝の時代に始まり、食べ物で病気を予防、治療する「食医」と呼ばれる専門医が存在していました。

食医は毎日皇帝の体を診察し、そのときの状態に合わせて飲み物や食べ物を提供します。
しかし、これは皇帝や貴族階級の人々の話でした。
それが徐々に一般庶民の間でも受け継がれ、「食べ物が薬となり、病気を予防するのだから、医者や高価な薬に頼るまえに、毎日の食事に気をつける」という医食同源の考え方が今日の日常生活に根付いています。

五味と五臓の関係

体に現れる不調はそれぞれ違いますね。
中国医学の理論に基づいている薬膳の基礎となるのが「陰陽五行説」です。
食べ物も人体も、すべて五行に配置されています。
食べ物は五味、人体では五臓です。
そして五味はそれぞれ五臓を補いあっているのです。

肝の環境で変わる体の不調

肝臓は血液の貯蔵器官であり、全身の血液の量と質をコントロールしています。
肝臓の働きが悪くなると血液の働きが悪くなり、瘀血(おけつ)になりやすくなるのです。
悪化すると古い血液がたまるばかりか、シミ、くすみ、子宮筋腫なども瘀血が原因と言われているので注意が必要です。

また精神作用を司る臓器でもあります。
肝臓が悪くなるとイライラしたり、情緒不安に陥りやすいです。
その他には肩こり、頭痛、のぼせ、めまい、不眠、生理痛、生理不順、冷え性や貧血なども肝臓が弱ったときに現れる症状です。

酸味で補い巡りを良くする

薬膳では五味に効用があると考えています。
酸味は肝臓に働きかけて養う働きがあります。とくに目、筋肉、神経に良いとされています。
ほかにも、寝汗や下痢、頻尿、遺精にも効果があるといわれていて、レモンや梅干しなどの酸っぱい食べ物や、生薬の五味子(ごみし)などはこの働きをします。

疲れたときに酸っぱい食べ物を求めるのは、酸味が肝臓の働きを高めて疲労を回復させてくれるためです。

ただし酸っぱい食べ物は、過食すると引き締める作用によって体内からの発散が妨げられるため、脾胃を傷つけ、筋肉を委縮させますので過食しすぎないように気をつけましょう。

酸味をとるなら必見の果実

ザクロとレモンは酸味に属しているので、肝臓を助ける働きにとても優れています。
とくにザクロは肝臓と深い関わりがあり、血液の巡りを良くして婦人科全般の諸症状を改善すると古くから言われてきました。

ザクロの豊富な食物繊維は下痢にも便秘にも効果があるのが特徴です。
ザクロは体をあたためる温性で、唾液の分泌を促して喉の渇きをとめ、大腸の働きを良くして肌を美しくする効果があります。

常備したい酸味の果実

ただしザクロはなかなか手に入らず、昔ほど出回らなくなりました。

簡単に酸味をとるならリンゴがおすすめです。リンゴはアダムとイブが食べた禁断の実。

酸味で温性なので、ザクロ同様、喉の渇きを癒して肺を潤します。咳や下痢を止めるほか、消化を促進して胃の熱をとり、胸のむかつきや不快感を解消する効果もありますよ。
西洋には「一日一個のリンゴは医者知らず」ということわざがあるほど、薬効の高い果実として知られています。

りんごの赤ワイン煮

①りんご1個は8つ切りにして皮をむき、芯を取る。
②鍋に赤ワインと水各1/2カップ、砂糖50gを入れて中火で熱し、砂糖が溶けたらりんごを重ならないように入れてレモンの輪切り適量をのせる。
③弱火にかえて紙ぶたをする。りんごが赤ワインの色に染まり、透き通った感じになるまで20~25分煮込む。
④火を止めてシナモン少々をふり、鍋のまま冷ましてお皿に盛れば完成。

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