前回は、若い人でも油断ができない、新たな国民病として患者数が急増している慢性腎臓病の原因についてお話しさせていただきました。
今回は、検査方法の続きと最新治療法についてお話しいたします。
腎臓病の検査
腎臓の検査には前回お話しした尿検査の他に、血液検査があります。この検査は「血清クレアチニン値」というものをチェックします。
クレアチニンは体内の老廃物を代表する物質で、通常、腎臓が正常なら尿に排泄されます。しかし、腎臓の働きが低下すると血中のクレアチニン量が増えます。クレアチニンの数値からは、「GFR」と呼ばれる値を計算します。
eGFR(推定糸球体濾過量)が60未満だと、慢性腎臓病の疑いがあります。この数値は、正常な腎臓の働きと比べ、何パーセント程度になっているかを表します。
糖尿病の場合は要注意
高血糖が原因の糖尿病性腎症では、タンパク尿やクレアチニンの検査だけでは早期発見が難しく、「微量アルブミン尿検査」が必要となります。
糖尿病性腎症の初期では、アルブミンと呼ばれるタンパクが尿に漏れることがあります。糖尿病の方は、年に1回はこの検査を受けましょう。早期発見で進行を抑えることが可能です。
ただし、この検査は一般の健康診断では行われないので、主治医に相談すると良いでしょう。
慢性腎臓病の最新治療『EPO』
これまで慢性腎臓病は進行を遅らせる治療で、特効薬もなく最終的には人工透析が必要になると考えられてきました。しかし、最新の研究により、腎臓内の微小な変化を把握し、積極的な予防・治療が可能な新戦略が見つかっています。
新しい戦略で注目されているのは、慢性腎臓病患者向けの「EPO(エリスロポエチン)」というホルモンです。慢性腎臓病にかかると重度の貧血になりますが、EPOを投与すると酸素を運ぶ赤血球が増えて体内の酸素が増加し、貧血が改善します。
医師は、患者の貧血治療としてこのホルモンを薬として使ってきました。しかし最近では、このホルモン投与が慢性腎臓病の進行を抑えると分かり、新たな治療法として注目されています。
食事で気をつけること
食事療法の基本は、
①「減塩」
②「タンパク質制限」
③「適正エネルギー摂取」
の3つで、症状に応じて「カリウムやリンの制限」も必要になります。
日々の食塩摂取は1日3g以上6g未満にし、徐々に薄味に慣れていきましょう。また、カロリーの過剰摂取は肥満を引き起こし、慢性腎臓病を悪化させるので腹八分目を心がけてください。
タンパク質も腎臓の負担を増やします。肉や魚以外に主食の米やパンにも含まれていますので、注意が必要です。また、慢性腎臓病の人は老廃物(尿毒症)によって腸内環境も悪化していますので、善玉菌を増やす食生活を心がけましょう。
適度な運動が腎臓を守る
いままでは、慢性腎臓病になると腎臓に負担がかかると考えられていたため、運動は制限されていました。しかし、現在では、慢性腎臓病への運動効果が明らかになり、適度な運動を推奨する方向に変わりました。とくにウォーキングなどの有酸素運動と筋力トレーニングを組み合わせて行うと効果的です。
なお、運動を始める前は、ストレッチしたり温めたりする準備運動を行いましょう。
最後に、専門医に相談したいと思ったら一般社団法人 日本腎臓学会のホームページで、お住まいの市町村名を入れて検索してみてください。専門医がいる病院や先生の名前が検索できます。
健康管理士の松渓(マッケイ)と申します! 若い頃はスキー三昧の日々を送っていましたが大ケガをして引退。そこから健康のありがたみに目覚めました。皆さまの日々の暮らしに「ちょっと役立つ」情報を随時発信していきますので、参考にしていただければ幸いです。
残念ながら、25年ほど健康関連の業界に身をおく私からすると、世にあふれる健康情報の中には「?」と首をかしげたくなる内容も。そのため、つい辛辣な言葉もでてしまうことがあると思いますが、どうかご容赦くださいませ。