特別暑いわけでもないのに肌がベトベト。湿気で髪はまとまらない。洗濯物は乾かないし、家事もはかどらない。もうじき梅雨がはじまります。
梅雨期の入り『入梅』は、もともと中国からきたものです。二十四節気の芒種(ぼうしゅ)と呼ばれる稲や麦などの作物の種をまく頃から5日目、立春後から135日目の6月10日頃を入梅といいます。
この頃から7月上旬にかけて、楊子江流域(ようすこう流域:中国最大の川)から日本におよぶ地域が梅雨期となります。この頃は湿度が高くなるため、昔の日本家屋は寒さよりも湿度対策に重点をおいていました。一年で考えると期間は短いですが、家を建てるときでさえ重要視されていた梅雨期。今回は、梅雨期の養生食についてお話いたします。
湿邪の影響
湿気はわたしたちの体にいろいろと影響をおよぼします。そのため、東洋医学では湿気を病因のひとつと考え、『湿邪』と呼んでいます。
湿邪は皮膚、内臓、筋肉や関節にまで影響を与えてきます。
乾燥性の水虫には都合がいいですが、ジュクジュク型の水虫は悪化させます。また胃腸系は特に影響を受けやすいです。ガスがたまりやすく、腹部の張りや下痢が起こりやすくなるでしょう。普段から胃腸が弱く、体内に余分な「湿」を抱えている人は、余計に湿邪の影響を受けやすくなります。
梅雨期の注意点
生ものや冷たいもの、水分も摂りすぎてはいませんか?「血液をサラサラにするから」「代謝をあげるため」「デトックス効果」と、やたらと水を飲む人を見かけますが、これは正しいのでしょうか?
1日に何リットルも水を飲む人がいますが、もともとはアメリカで良いと言われて流行ったのがきっかけです。
日本は海に囲まれていて湿度が高いところが多く、猛暑日や激しい運動をしない限りは水分蒸発がひどくなることはまずないでしょう。梅雨期に病気にかかりやすい人や、夜中に何度も小水で起きる人などは、水分を少し抑えた方がよいのです。夜間排尿が多いために熟睡できないと、高血圧にはかえって悪影響を及ぼします。
梅雨期の養生食
「胃は湿気を嫌う」といいます。湿気は汗腺をおおい、汗を出にくくします。上手に体内の水分が発散できるよう、湿気をとり、発散作用のある食物を意識的に摂ることをおすすめします。
『胃腸を助け、気のめぐりを良くする』
▽ネギ・・・悪寒を治し、冷えによる腹痛を治す
▽生姜・・・胃腸の冷えに伴う吐き気を止める
▽シソ・・・汗を出し、胃のつっかえをなくして排便をよくする
▽らっきょう・・・胃腸を温め、冷えによる下痢を止める
▽みかんの皮・・・消化を助け、嘔吐を鎮める。胃腸のガスを排出、腹部の膨張を除く
『胃腸の機能を補い、利尿作用のあるもの』
▽小豆・・・むくみを取り、血行をよくし、肌につやを与える
▽大豆・・・胃腸の働きを正常にし、利尿、解毒、風熱の邪を払う
▽そら豆・・・脾胃の働きをたすけて健やかにし、むくみを取り除く
▽とうもろこし・・・不要な水分を排出、胃腸の働きを活発にする
『手足の冷えや下痢、お腹の痛みには』
▽唐辛子・・・胃腸を温め、食欲を増す
▽ニンニク・・・胃を健やかにして、冷えによる下腹部や胸腹部の腫れを除く
▽ニラ・・・胃腸を温めて冷えを除く
▽シナモン・・・体を温め発汗を促し、冷え症改善
おすすめレシピ
むくみの薬膳で有名なのは『鯉と小豆のスープ』です。
とくに急性腎炎によいとされています。鯉は小便の出をよくして腫れ物、黄疸、湿熱の病を治し、小豆には湿を取り除いて尿の出を良くして、一切の熱毒、風腫を取り去る働きがあるのです。
そのほかに、ハトムギや生姜、冬瓜(トウガン)、へちま、黒豆などの食材もよいでしょう。
▼病気によるむくみを解消▼
冬瓜と小豆のスープ
冬瓜の皮100~200g、小豆60gを洗って水1ℓと一緒に鍋に入れ、ネギのぶつ切り3g、生姜の薄切り3g、胡椒2g、塩3gも加えて火にかける。小豆が軟らかくなるまで煮て、最後に塩胡椒で味を調整してください。
体内の余分な水分を排除し、すぐれた利尿作用でむくみの改善に。腎炎、心臓病、脚気などからくるむくみを解消する。暑気あたり、糖尿病の喉の渇きにも効果◎
▼一年保管で年中利用▼
甘くて美味しい、スイカ糖
完熟したスイカ1玉の果肉を小さく切って鍋に入れ、混ぜながら中火で熱する。形がなくなったらガーゼで絞り、弱火で混ぜながら水飴状になるまで煮詰める。冷蔵庫で一年は保存可能。
暑気払いの代表選手。夏バテを解消し、利尿作用で腎臓病や妊娠時のむくみを解消。スイカの種子は動脈硬化や老化防止に効果を発揮します。
「東京薬膳研究所」代表。本場中国で薬膳を学び、帰国後は日本の気候風土に合った薬膳理論を研究。和食薬膳・食養研究の第一人者である。『食は薬なり』を全国へ広めるため、執筆活動のかたわら各地で講演を行い活躍中。著書に『決定版 和の薬膳食材手帖』『旬を食べる和食薬膳のすすめ』(すべて家の光協会)などがある。