ボーっと生きているとチコちゃんに叱られそうだけど、春は鬱々として気分の晴れない人や、無気力な人が増えてきますよね。東洋医学では、春は自律神経をつかさどる肝のバランスが崩れやすい季節といわれています。
4月は入学、入社、転勤など、新しい環境への期待や、やる気など、心身ともにチャレンジ精神が旺盛です。そんな緊張が続き、5月の連休に入って緊張感から開放されると、ゴールデンウィーク明けあたりに気がゆるんで情緒不安定となり、さまざまな症状となって現れます。病気ではないですが、このような症状を五月病と呼んでいます。
五月病の症状
中国医学では「肝気うっ血」といい、気分が落ち込み、憂鬱になります。
無気力、無関心、イライラ、不安感、焦り、判断力や思考力の低下など、精神的にさまざまな症状が現れます。また、肉体的にも影響はでてきます。だるさ、疲労感、睡眠障害、食欲不振、便秘や下痢、腹痛、頭痛、めまい、吐き気などです。
肝のバランスが崩れると
東洋医学で考える肝の働きには、血液の解毒に加えて気血のコントロールと血を蓄える働きがあります。血液と関わりの深い肝の働きが高ぶると、頭に血がのぼってイライラしたり、顔や首がほてったりと、不眠や精神不安な状態を生じるのです。
そのほか、眼や鼻の粘膜で充血などの炎症が生じやすくなり、春先の花粉症などのアレルギー症状の一因にもなると考えられます。とくにアトピー性皮膚炎は春に悪化しやすいと言われています。
また、肝機能が以上に高ぶりやすい春は血液を解毒しきれず、古い血液が体内に滞りやすくなります。これが原因となって血液全体の活性が失われ、細胞の新陳代謝が悪くなり、皮膚にアザやシミ、湿疹や吹き出物ができるなど、皮膚トラブルの原因にもなりうるのです。
春に旬を迎える苦味の食材
春は冬の間に溜まった老廃物を体外に排出する季節です。この時季、自然界に芽を出す山野草やお茶などには苦味・えぐみ・渋みがありますね。こうした食べものには解毒の作用があります。ほろ苦い春野菜には、昇りすぎた肝の気を抑えるとともに、腸内のデトックス効果もあるのです。旬の恵みを食卓に並べるようにしましょう。
〜苦味の食材〜 春かぶ【温性】 |
肝の働きを助ける酸味の食材
酸っぱい食べものは、気や血のめぐりと関係の深い肝に働きかけます。イライラしやすいときにはリラックスに、また疲労回復効果にも優れ、つかれたときにはリフレッシュに役立ちます。調味料では酢や梅干しなどを上手に活用し、柑橘類も摂りいれるようにしましょう。
▼苦味+酸味で気分晴れ晴れ!▼
うどの辛子酢味噌和え
【材料】
うど 1本
酢水 適量
☆辛子 小さじ1/2
☆砂糖 小さじ1
☆酢 大さじ1と1/2
☆味噌 大さじ1
【作り方】
①うどは皮を剥き、短冊切りにして酢水にさらします。
②☆の材料をよく混ぜてタレを作っておきます。
③うどの水気を切って水分をよく拭き、②のタレとよく和えて完成です。
香りや歯ごたえが存分に味わえる一品。同じく春が旬のあさりやわかめなどを合わせるのもおすすめ。身体を冷やす海藻や貝類は、温性の辛子を加える辛子酢味噌あえがぴったりです。厚めに剥いた皮はきんぴらなどにすると、うどを2度楽しめます。
春に採れる苦味食材の効能
春かぶ
▽幅広い効能で五臓に働きかける▽
・消化を助ける
・精神を安定させる
・咳や痰を鎮める
・口の乾きを癒す
・水分代謝を促す
・解毒する
たけのこ
▽老廃物や毒素をとり除く▽
・体内の熱を冷ます
・痰をとり除く
・便通をよくする
・老廃物や毒素をとり除く
ふきのとう
▽冬の間にたまった老廃物や脂肪を解毒する▽
・便通をよくする
・肺の働きを助ける
・咳をとめる
・痰をとり除く
・胃の働きを整える
・老廃物や毒素をとり除く
菜の花
▽春先に多い血のトラブルを改善する▽
・血行をよくする
・腫れをひかせる
・炎症を鎮める
うど
▽「風・湿・寒」の3つの邪気を取り除く▽
・体内の湿気を除く
・冷えを改善する
・咳・鼻水・のどの痛みなど、風邪の諸症状をやわらげる
・痛みをとめる
春の食材を日々の食事にとりいれ、季節の変化と上手に付き合っていきましょう。
「東京薬膳研究所」代表。本場中国で薬膳を学び、帰国後は日本の気候風土に合った薬膳理論を研究。和食薬膳・食養研究の第一人者である。『食は薬なり』を全国へ広めるため、執筆活動のかたわら各地で講演を行い活躍中。著書に『決定版 和の薬膳食材手帖』『旬を食べる和食薬膳のすすめ』(すべて家の光協会)などがある。