
草木の若芽がだんだん張り切る「芽張る」に春の語源があるといいます。
春の野菜や山菜は、それぞれ個性味があり、せり、つくし、よもぎ、ふき、うど、たけのこなどいずれも特有の味(アク)がありますが、このアクは持ち味のひとつです。
強すぎると味わいを損ねてしまいますので、アク抜きをしてから調理しましょう。
春を代表する苦味の食材
わらびは木灰(きばい)を振りかけて熱湯をたっぷり注ぎ入れ、フタをしてそのまま冷えるのを待つ。ふきは灰汁を加えた熱湯で茹でる。うどは分厚く皮を剥き、酢水にしばらくつける…といった具合に、それぞれふさわしい方法でアク抜きをします。
いずれもアクを全部抜くのではなく、味の邪魔をする分だけを抜いて、残りは持ち味として大切にします。アクをほどよく抜いて旨味に変えるのが、春の幸を上手に調理するコツとも言えますよ。
そして、春に採れる苦味の食材には嬉しい効能もたっぷりです。
つくし
つくしだれの子、すぎなの子♪…と童謡で歌われているつくしは、春の摘み草の代表格です。
春、荒れ地や土手など肥料の乏しいやせた土地によく生えています。
節々に固いハカマをつけているつくしは、さっと茹でて和え物やおひたし、煮物、卵とじ、油炒めなどにすると美味しく召し上がれますよ。
ミネラルを多く含み、食物繊維も豊富で、便秘改善、美肌の維持に効果が期待されます。
カリウムも多く、利尿効果もあるので、むくみ予防にも。
女性にやさしい自然界からの春の贈り物です♪
江戸時代には民間薬としてよく利用したようで、乾燥させて濃ゆく煎じ、お茶として飲むと虫下しに良いとされてきました。
菜の花
薬膳の学習で訪中していた思い出として、黄金色の菜の花が畑一面に広がる四川省の春景色は、まさしく春爛漫。
そのスケールの大きさに圧倒されたのをいまでも覚えています。
血の騒ぐ季節と言われる春が旬の菜の花は、熱を伴う炎症や腫れ物を治します。
せり
「せり、なずな、ごぎょう、はこべら、ほとけのざ、すずな、すずしろ」と春の七草の筆頭にもあげられ、七草がゆなどに用いられることでも知られますが、特有の香りは早春の息吹を感じさせてくれます。
せりは胃腸の働きを良くし、二日酔いを解消にも効果的。
造血作用がある葉酸、鉄分を多く含み、貧血を予防して美肌をつくる嬉しい効能もありますよ。
うど
うどは「独活」とも書きます。
中国の古書には「うどの花は風あるも風に揺るがず、風なくも独り揺らぐ」とあり、独り揺らぐさまが、まるで動物が生きているようだというところからつけられた名前だと言われています。
山野に自生する【山うど】は、原野や山麓などで3月頃から採取できます。
若芽の茎やほころびきらない若葉、花のつぼみを食用にします。
そんな山うどに対して、通常の【うど】と呼ばれるものは、人工的に栽培したものです。
11月頃から2月頃にかけて栽培される極早生の【寒うど】と、5月頃から6月頃にかけて収穫される【春うど】があります。
やはり、山うどの方が香りやうまみにおいて優れますが、その分アクが強く、クセがあります。
おすすめレシピ
つくしの卵とじ
①つくし300gははかまをとってよく洗う。
②フライパンに砂糖大さじ3、しょうゆ大さじ3、水大さじ1、①のつくしを入れて火にかける。
③つくしがしんなりして水気がなくなってきたら溶き卵4個分を加え、好みで卵に火を通して完成。
菜の花ちらし
①米4カップは炊く1時間前に研いで水加減をし、炊飯する直前に昆布1枚を入れて炊く。
②小鍋に酢100ml、砂糖と塩各大さじ1、白煎りごま大さじ5を入れて火にかけ、合わせ酢をつくる。砂糖が溶けたら冷ましておく。
③酢水で湿らせた布巾で飯台を拭いて、①で炊いたご飯をあけて合わせ酢をまわしかけ、一気に全体を混ぜる。
④酢飯が人肌くらいになったら、ちりめんじゃこ2/3カップを振りかけ、さっと茹でて水にとり冷ました菜の花を加えてざっくり混ぜ合わせる。好みで錦糸卵をのせて完成。
せりのみそよごし
①せり100gは熱湯にさっとくぐらせて水にとり、水気をしっかりきって細かく刻む。
②鍋にごま油適量を入れて、①のせりと味噌大さじ1、砂糖大さじ1、刻みごま適量、みりん少々を入れてよく和え、水気がなくなるまでよく炒って完成。
うどのきんぴら
①うど100gは皮をスポンジの背の固い部分でよくこすって柔らかくする。
②うどを3~5cmの長さに切り、縦二つか四つ割りにし、酢水に入れて10分程さらし、水気を切る。
③にんじん15gは細切り、油揚げ1/2枚縦半分に切って細切りにする。
④フライパンに油を入れ、塩少々をふって強火でうど、にんじん、油揚げを炒める。
⑤1~2分炒めて火が通ったら、酒とみりん、しょうゆ、塩各少々で味をつけて1分程度炒めて完成。お好みで七味唐辛子をいれても美味しい。
「東京薬膳研究所」代表。本場中国で薬膳を学び、帰国後は日本の気候風土に合った薬膳理論を研究。和食薬膳・食養研究の第一人者である。『食は薬なり』を全国へ広めるため、執筆活動のかたわら各地で講演を行い活躍中。著書に『決定版 和の薬膳食材手帖』『旬を食べる和食薬膳のすすめ』(すべて家の光協会)などがある。