コラム

湿邪と暑邪の対策レシピ

日本の夏は昔から暑さに湿気が加わるため〝蒸し暑い〟のが特徴。
四方を海に囲まれた島国のため、もともと湿気が高く、衣食住はその影響を受けて文化を形成してきました。伝統的な日本家屋は寒さよりも暑さ・湿度対策に重点を置いた程です。
湿気や暑さは私達の体にも様々な影響を及ぼすため、中医学では病因の一つと考え「湿邪」「暑邪」と呼びます。
日本の蒸し暑い夏は、「湿邪(しつじゃ)」と「暑邪(しょじゃ)」の二つの対策を取る必要があるのです。

目次

 

湿邪の影響

まず影響受けるのが、外界の変化にもっとも敏感に反応する皮膚です。
人体は暑いときは汗腺を開いて発汗し体温を下げ、寒いときは皮膚をひきしめて体温を逃がさないように働きます。これは体内温度を一定に保とうとするためですが、こうした皮膚呼吸によって、呼吸器の働きも助けているのです。

ところが湿度が高くなると、皮膚の代謝機能が阻まれて、皮膚呼吸がうまくできなくなり、なんとなく息苦しくなったり、重苦しく感じるようになったりします。
また、水虫や皮膚疾患が悪化しやすくなります。

内臓では特に胃腸系に影響が現れます。
〝胃は湿を嫌い、燥を好む〟と言われ、湿気によって消化吸収能力が低下し、食欲不振、消化不良、腹部の膨満感や下痢などが起きやすくなります。
また「湿邪」は代謝を滞らせるため、余分な水分が体内に溜まりやすく、むくみを生じます。

暑邪の影響

高温・多湿の夏季は、〝心〟に最も負担のかかる季節とされます。
発汗は体表の毛細血管にまで血熱を運ぶため、もともと心臓に負担がかかりますが、それに加えて湿気でうまく発汗できないことで、更に大きな負担となるのです。
発汗することで血液濃度が高くなるため、頻脈・不整脈・血液循環不良・動悸・息切れなど、血液循環器系のさまざまな不調が出やすくなります。

また、水分代謝が活発になる一方で、過剰な水分摂取や「湿邪」の相乗的な影響で体内に余分な水分が滞り、冷えを嫌う胃腸の消化機能が低下しやすく、いわゆる夏バテの諸症状を引き起こしがちです。

身体を守る夏の食養法

夏に最も負担のかかる心臓は季節を問わず熱を持った場所です。暑邪によって過熱気味の〝心〟を助けてくれるのが、苦味の食物です。

強心・消炎・解熱・鎮痛・利尿作用があり、心臓の高ぶりを抑え、体内の熱を冷ます性質があるので、〝心〟の働きを助ける苦味の食材を積極的に取り入れましょう。
また、夏が旬の野菜や果物は水分を豊富に含み、体の熱を冷ます作用を持ちます。
喉の渇きを癒すのにも適し、カロテンやビタミンC・カリウムなども多いため、汗と一緒に排出されるビタミンやミネラル分を補うこともできます。

さらに利尿作用のあるものを上手に組み合わせると、循環器系のトラブルやむくみの解消に役立ちます。
とくにハト麦はむくみ取りの生薬で、ヨクイニンとしても有名なように利尿作用が高く、効率的に水分を補ってくれる食材です。

食材の効能

・山芋・・・甘/平
滋養強壮作用があり、疲労・衰弱・頻尿・寝汗・食欲不振・消化不良・下痢を改善する。咳・痰を除く。
・らっきょう・・・辛/温
ニンニク、ネギ、ニラと同じユリ科。
原産地は中国。日本には薬用植物として平安時代に渡来し、野菜として栽培が始まったのは江戸時代といわれる。悪寒・発熱を繰り返す寒熱病を治し、胃腸を温め、赤痢、冷えによる下痢、婦人の帯下を治し、胸部のつかえを消し、気持ちをおだやかにする。
胸部の心痛・背中の痛みによい。1日3~4個毎日食べるとよい。
・ゴーヤー・・・苦/寒
利尿だけでなく、胃液の分泌を促して食欲を増進させ、疲労回復するため、夏バテ防止にも役立つ。口の渇き、イライラ、不眠、腫れ物、炎症を鎮め、解毒、視力の強化作用がある。

夏の食養生レシピ

▼梅肉麦とろご飯

湿邪と暑邪で弱った胃腸を養う主食。
脾胃の滋養食である山芋と麦ごはんを用いた〝麦とろ〟に、梅肉を和えた一品。
①米2合と押し麦1合は洗ってザルに上げ、30分程度水気を切っておく。
②米・押し麦と同量の水で炊く。
③山芋300~400gは皮を剥いてすり鉢ですり下ろす。
④種を除いた梅干し適量を③に加えてすり混ぜる。
⑤だし汁300~400ml、酒大さじ2、醤油大さじ1、合せ味噌大さじ2を合わせてかけ汁をつくる。
⑥梅をすり混ぜた山芋に⑤のかけ汁を少しずつ加えて、混ぜ合わせる。
⑦器に炊きあがった麦ごはんを盛り、⑥の梅とろろをかける。
⑧細かく切った葱を適量添えて完成。

 

▼らっきょうとゴーヤーの胡麻酢和え

気の巡りを良くして温めてくれる辛温のラッキョウと、余分な水分を排出してむくみを解消してくれる苦寒のゴーヤー、食養の大原則二味の法則の活きた一品。
①らっきょう8個は皮を剥いてスライスし、熱湯にさっとくぐらせてすぐ冷水にとり、水気を切る。※らっきょう漬けではなく、生のらっきょうを使用してください。
②ゴーヤー1本は縦半分に切ってワタをス プーンで取り、スライスして塩を適量ふり15分程置いて水気を絞る。
③ボウルに白すりごま大さじ2、米酢大さじ2、五味子酢大さじ1、薄口しょうゆ少々を入れて混ぜ合わせ、①と②を加えて和える。

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